第334話理事会は無事終了 麗に専属秘書の提案

文字数 1,380文字

大旦那は麗と関係筋の話を聞きながら、麗の考えを感じ取っていた。
「つまり、石仏調査を一人一体に限定するのは、単に作業が楽で参加者が結果的に増えるだけではない」
「そうしとかんと、石仏調査の数を求めて、参加者の間で競争が生じてしまう」
「数が多ければ、その功を自慢し、九条家後継の麗に、売り込みをかける」
「ただ、麗としては、今は京都に顔見せしたばかり、特定の連中だけに甘い顔を見せることは避けたい」

「あるいは、参加者の間で、これは俺がやる、お前がやるな、そんな争いごとにもなりかねん」
「麗としても、九条家の名を冠した最初の大きめの事業や」
「争いごとは避けなあかんし、それがないように慎重に事前準備を重ねる」
「麗らしい、極力、揉め事を起こさん考えやな」
「おとなしめで拍子抜けする案やけど、実は考えが深い」

麗にとって、最初の理事会出席は無事に終わった。
その麗の周りに、理事たちが集まって来るので、麗は声をかける。
「いつか、何とか時間を見つけて、それぞれの本部を見学したいと思います」
「その際には、事前連絡を行いますので」

麗から声をかけられた関係筋は、一様に笑顔。
「お待ちしとります、いつでも構いません」
「ますます、安心です、どうぞ忌憚のないご意見を」
「楽しみですなあ、いろいろとお考えも深くて」

茜は、理事たちに笑顔で囲まれる麗を見て思った。
「こうなると、専属の秘書が必要やなあ」
「うちでもいいけど、麗ちゃんの頭脳についていけんし」
「後で、相談せなあかん」

そんな理事会も終わり、理事たちが全員帰ったので、大旦那、麗、五月、茜はリビングにて一服。
大旦那が、まず麗を褒めた。
「麗、上出来や、よく考えとる」
五月も続く。
「完璧です、いや、完璧以上です、誰も困らせず、九条の好感度をますます上げました」
茜は麗の手を握る。
「もう、理事会の主役、うれしくてなりません」
麗は、その褒め言葉に、引いている。
「いや、いきなりの新人で、まだまだ素人の段階」
「勉強すべきことは限りなく、資料の読み込みも完全ではなく」

茜は、考えていたことを提案する。
「麗ちゃん専属の秘書が必要かと」
「お世話係は一週間交代なので、継続性がない」

五月も頷く。
「都内で大学に通う、その生活とか健康管理くらいなら、お世話係で構わんけど」
「京に戻って、理事としての仕事をする時」
「どこかの事務所に出向く際にも、麗ちゃんが直接交渉なんて、ありえんし」

大旦那は、全く異論がない。
「そのほうが無難やろな、後は人選や」
「それは、任せる」
「決まったら、その旨」

ずっと話の成り行きを聞いていた麗が、口を開いた。
「私のほうでも、少し考えます」
「今すぐに人選との話でもなく、来月の理事会で紹介する程度に」
「都内の大学に通っている事情も理解してくれる人に」
などと、麗らしい慎重な対応を見せる。

そんなリビングでの相談を終えて、麗が自室に戻ると、ドアにノック音。
麗がドアを開けると、涼香だった。
涼香
「麗様、お着替えを」

麗はやはり恥ずかしい。
風呂場で混浴したこともあるし、理事会前は着替えを手伝ってもらったとしても、恥ずかしさはなくならない。
それでも、涼香に恥をかかせてはならない、素直に応じていると、涼香も赤い顔。

着替えがスムーズに終わったので、麗は涼香に声をかける。
「ありがとう、この一週間、頼みます」
麗が少し腕を広げると、涼香は抱き着いてくる。
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