第213話神保町デートはあっさりと終了、麗は九条家に連絡

文字数 1,139文字

葵は麗と神保町を歩きながら、その街並みより麗から目を離せない。
「時々、怖い時があるけど」
「それが全部、私の誤解で」
「その誤解が解けると、深い思いやりを感じる」
「指が長くてきれいだ」
「髪の毛なでられたらアウト、抱きつくしかない」

そこまで思って、お世話係の直美を思い出した。
「ふくよかで、おおらかで、仕事が上手なタイプ」
「毎晩・・・もしかして?」
「家柄は、私のほうが上」
「正式に伴侶になれるのは、私とか関係筋の中からで決まっている」
「でも・・・不安だ・・・」
「麗様の気持は、また別かもしれない」
「お世話係は毎週交代とか、ますます混乱する」

その麗は、会計に関する本を数冊、簡単に購入。
そして、ようやく葵の顔を見た。
「私の用事は済みました」
「少し用事があるので、アパートに戻ります」

葵は焦った。
自分も麗と同じ勉強をすると言いながら、麗に見とれて、違う話に思いが及び、何も本を探していない。
そんな自分が、麗を引き留めて、「用事の邪魔」をするのも、実に失礼と思う。

その葵の表情から、気持を見透かしたのか、麗がフォローをする。
「もし、お買い物がなければ、途中まで一緒に」
葵は、顔が真っ赤。
「はい」と応えて、途中までの付き合いをするしかなかった。


麗は、アパートに戻った。
直美が、うれしそうな顔で、出迎える。
「お疲れ様でした」
麗も、直美に慣れて来て、ごく自然に鞄を渡す。

直美がジャスミン茶を出して来たので、二人で一服となる。

「葵さんと九段下の財団事務所にご挨拶をして来ました」
直美
「はい、高橋所長様から、お礼の電話がありました」

「その後、葵さんと神保町まで歩いて、会計の本を購入して」
直美はクスッと笑う。
「それにしては、お早いお時間で」

「そのまま帰って来たので、葵さんも買い物がないようなので」
直美は、また笑う。
「まあ、もう少し歩かれても、それでは葵さんが可哀想です」
ただ、内心は、また違うようで、ますますうれしそうな顔。

麗は、直美の笑顔の意味がわからないけれど、ジャスミン茶を飲み終わったので、自分の部屋に入った。
そして、早速、茜に連絡。
「姉さま、九条財団の九段下の事務所に行って来ました」

「ああ、それはご苦労様、こっちにも所長から連絡がありました」

「それで、九段下の担当理事をお願いされたけれど」
「即答はしなかった」

「うーん・・・高橋所長も、それを心配しとった、何でや?」

「妥当な話とは、最初は思った」
「ただ、そのお願いぶりが性急すぎる」

「何か感じた?麗ちゃん」

「特に財務かな、だから簡単な会計の本を買って」

「母さんと大旦那には、うちからも言うけど」

「思い過ごしであることを望むけれど、僕からも」
「それから、財団の財務データを送ってください」
麗の顔が、厳しくなっている。
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