第107話信じられないほどの残高増

文字数 1,269文字

麗の一日一食生活は、変わることはなかった。
ここ杉並のアパートに転居してから、昼食を食べたのは麻央の実家に行った時の2日間くらいで、他にはない。
「やせていると、茜さんに叱られそうだな」と思うけれど、食欲がないのだから、仕方がない、無理をしてまで食べる必要はないと思っている。
そんな麗の授業は、午前中で終わり。
つまり、午後は、全く自由になる。
麗は、いろいろ考えた。

「神保町でも歩いて、古本でも探すか」
「九条の大旦那と茜さんがアパートに来るのは、明後日の午前中か」
「何も手土産がないと、まずいかもしれない」
「となると、京都には無い物?」
「それをどこで求める?」

麗が財布を見ると、2万円程度が減っているだけ。
「月初は5万円あった」
「本を買ったくらいで、食費も弁当を買っても500円にも満たない、珈琲豆買ったけれど」

麗は、「それでも」と思い、コンビニのATMに寄る。
そして、残高照会をして、驚いた。

「これは・・・増え過ぎている」
「一年間分を振り込んだのか?俺の親が?」
「一年間・・・いや・・・それよりもメチャクチャに多い」
「その桁ではない、何があった?」
「そもそも、親にそんな金があったのか?」
「お年玉を無理やり取り上げるような親だぞ、しかも血が出るほど殴って蹴って」

そう考えた時点で、麗は親が振り込んだとは思わない。
「おそらく晃叔父か、九条の大旦那か」
「誰に聞けばいい?」
「知らんぷりをするか」
と、なかなか結論が出ない。

5月の使い道を考える。
「もしかして京都に葬儀で行くかもしれない」
「その電車賃がいる」
「喪服・・・家に残してきた、取りに行くのも面倒」
「作るかな、前のはきつかったし、少し高めの」
必要な金額を計算するのも面倒、結局10万円を出金して、神保町に向かった。


麗の「実家」では、「母」奈々子が、ためらっている。
「麗に連絡をしないと・・・驚くかな」
「馬鹿亭主が麗の預金通帳から出した金額を全部、馬鹿亭主の口座から補填した」
「結局、麗の口座から移しただけか、あまり使っていない」
「子供の頃からだから、3000万を超える」
「馬鹿亭主は抜けてる、通帳も印鑑も、すぐにわかるところにあった」
「自分のも麗のも、通帳も印鑑もそろえて」

「母」奈々子は、実家の兄晃にも、その旨を連絡。
「兄さん、3000万超えてた」

「そか、それくらいや、覚えがある」
「亭主は困るかな」
奈々子
「知らんわ、そんなの、恵理さんと仲ようしとるやろ」

「恵理さんについては、九条の大旦那が動いとる」
「恵理さん、俺がその筋に聞いたら、かなり危ないことしとるみたいや、海外でも」
「それをそのまま、大旦那に伝えたんや」
奈々子
「それは・・・薬?」

「麻薬や、おそらく」
奈々子
「警察には?」

「ああ、もちろん知り合いの口の堅い奴に伝えた、日本にいる時から調べられていたみたいや、大旦那に遠慮して踏み込まなかっただけとか」
そして、低い声。
「海外で勝手に逮捕されるほうがええかもな」

奈々子の声も低い。
「できれば・・・うちの馬鹿亭主もや・・・帰ってこんほうがええ」
奈々子と晃の電話は長く続いていた。
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