第466話麗の不安 香苗と五月の相談

文字数 1,362文字

高輪の家でのパーティーは大成功に終わった。
可奈子が手配したタクシーが三台、玄関前に横付けになった。
香苗と瞳は、まず一台目のタクシーは久我山行きとして、花園美幸、葵、奈々子、蘭を乗せる。
そして自分たちは、方向は吉祥寺と鎌倉と異なるものの、別の場所、高輪のホテルのバーにて話すことにした。

その高輪のホテルのバーに入り、香苗は話を始めた。
「さっきも言うたけど、麗ちゃんの護衛が必要かと」
瞳も、賛成。
「そうやね、万が一あると困るし」
桃香も加わる。
「4月には、欠食で、一日一食生活、それもコンビニのおにぎりを二個」
「それで倒れて、大学図書館の山本さんって人に助けられて」
「あの時、助けられなかったら・・・マジに危なかった」
美里もかつて感じた不安を言う。
「私も4月かな、本当に痩せていて、いつ倒れても不思議でない、そんな感じ」
「今は、お世話係さんがいて、食事の事情は好転したけれど」
香苗
「葵様も大学にいて、お昼を一緒に」
「葵様がいなかったら、おそらくお昼は食べない」
桃香
「怖いのは、三井芳香みたいな包丁を持って追いかける人が、また出ること」

「今、不安なのは、大学への通学路かな、一人きりになるのは」
美里
「でも、麗様の性格で、護衛は嫌がるかなあ・・・必要だけど」
香苗
「うちが、五月様に相談します」

「悪いけれど、奈々子さんでは、あてにならんだろうし」
香苗
「奈々子は、結局、お嬢様育ち、可愛いのは自分だけ」
「麗様のことも、蘭ちゃんのことも、考えていない」
桃香
「一緒に歌っていて、香苗さんと瞳さんが呼んでいるのにも気がつかず」
美里
「麗様と蘭ちゃんが目配せしても、全く気がつかない」
香苗
「マジに無神経な奈々子、麗ちゃんも、だから苦労した」
「恵理も宗雄も瀕死で、これからは苛められることもないけれど」

そんな話し合いがまとまり、香苗はその場で五月に連絡を取る。
「五月様、高輪の家でのパーティー、楽しく終了しました」
五月
「はい、お疲れ様、先ほど、可奈子さん、花園美幸さん、葵さんからもお礼の電話がありました」
「ああ、それから蘭ちゃんからも、ありました」

香苗は、「奈々子からは何のお礼もない」と、ほぼ想像通りなので、あえては言わない。
また、五月の言葉にも、「奈々子への落胆」がしっかり込められていると感じる。

香苗
「それで、瞳さんとも話しているのですが、麗様の通学時間が不安です」
五月
「それは、大旦那様も茜も、九条屋敷全体が心配しとります」
「先ほども話し合って、一応の考えがまとまりました」
「大旦那様の考えでは、高輪の家のできるだけ近くに、マンションを購入」
「そこに花園美幸さん、葵さん、奈々子さん、蘭ちゃんを移す」
「不動産の仕事になりますが、当面、葵さんと一緒に登校すれば、危険は減るだろうと」
香苗
「そもそも久我山に住まなければならない理由もなく、ですね」
「わかりました、助かります」

五月の声がゆるむ。
「ほんま、そういう心配をしてくれる香苗さんがいて、どれほど心強いか」
「頼りになります、香苗さん」
香苗の声が湿る。
「うちは、麗様の苦しそうな、辛そうな顔を、もう二度と見たくなくて」
五月の声も同じように湿る。
「ほんまや・・・麗ちゃん、辛過ぎたよ・・・あんな里親で・・・」
「申し訳なくて」

そんな香苗と五月の会話を聴き取っている全員が、目頭をおさえている。
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