第486話奈良から京都へ 九条屋敷に帰る

文字数 1,371文字

サロンバスが京都に近づき、女性たちも目を覚ます。

「もう着いてしまう?寂しいわぁ」
「そやな、楽しいことは、あっと言う間に過ぎる」
「奈良も楽しかった、麗様も、みんなもおって」
「言いたい放題で、食べたい放題で、ほんまに」
「ああ、京都は重いなあ・・・頭も気も重くなる」
「肩に力が入って来た、常に人の目を気にせなあかんし」
「こんなんやったら、一生旅行していたい」
「麗様と、みんなと?」

麗は女性たちの話を興味深く聞く。
京の名門お嬢様たちにも、そんな気持ちがあるのかと思う。
そんな気持ちから、葵が自分を追って東京の大学へ進学したこと、お世話係たちが東京に出たがるのだと思う。
「やはり、京都人にも京都は重いのか」
「いや、京都人だから京都は重いのか」
「常に他人の目を気にして、出しゃばらないようにと、言動の一つ一つに神経を使う」
「下手な噂は、命取りになる、それが怖い、怖過ぎるのか」

茜が麗の顔を見た。
「なあ、麗ちゃん、締めで、みんなに何か言うてあげて」

麗は、茜と女性たちの気持ちを察して、締めの挨拶。
「今日は、皆様のご協力のもと、楽しい旅行でした、ありがとうございました」
「今日だけでなく、またみんなで京都を出て、旅行しましょう」
「秋には、伊豆グルメツアーも考えています」
「是非、その際にはご参加を願います」

一斉に拍手が起こるので、麗が一安心していると、女性たちは麗に口々に感謝。
「ほんま、生き返りました、いい旅で」
「何度でも、かまいません、どんど誘って欲しくて」
「伊豆も楽しみです、また希望ができました」
「麗様と歩いていると、安心します」
「みんな、一生続けましょう、こんな旅を」
「当たり前です、ほんま楽しい」

サロンバスは、午後4時過ぎに九条屋敷に到着。
女性たちは、大旦那や五月にもお礼のあいさつ、その後はそれぞれの家からのお迎えの車で帰って行った。

麗は茜、葉子、お世話係の美幸とリビングに入り、大旦那と五月に帰りの報告。
「ただいま、戻りました」
「事故もなく、体調不良の人もなく」
「お気遣い、ありがとうございました」

大旦那は、やわらかな笑顔。
「麗も気を遣ったやろ、ご苦労さん」
「興福寺、春日大社、東大寺、不空院、新薬師寺、全部麗を褒めておった」
「わしも、安心した」
「まあ麗なら、どこに出しても心配はないけれど」

茜は、少し笑う。
「麗ちゃんは、四月堂の十一面観音さんにご執心で」
「確かにメチャ可愛い観音様やった」
五月も笑顔。
「へえ・・・知らんかった・・・前は大きな千手観音様やったけれど、変わったんやね」
「うちも見たいわぁ・・・そこまで麗ちゃんが気にするなんて」

大旦那は頷く。
「人それぞれ、目や心を惹かれる仏様がある、大事にすることや」
「いつも必ず、守ってくれる、その人が気付かなくても」

大旦那と五月への報告が終わり、麗は美幸と自分の部屋に戻った。
美幸は麗の肩を揉む。
「ほんま、麗様、お疲れ様でした」
麗は、肩を揉まれるのが、恥ずかしい。
「美幸さん、今日は一緒の行程で、私のほうが年下です」
美幸は、クスクス笑う。
「そうですねえ、葵様以外は、全部お姉様ばかりでした」
「ずっと見ていました、誰と一番話をするかと」
「でも、目立つ動きは何もなく、少々残念」
麗は苦笑。
「とても、あれだけの美女ぞろいでは・・・どうにもこうにも」
美幸は、肩揉みを止め、後ろから麗を抱きしめている。
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