第404話時代和菓子試食会(4)麗の感謝と職人たち

文字数 1,276文字

和菓子試食は、ついに江戸期に入った。
佐藤の顔も、少しやわらぐ。
「長く続いた戦乱も終わり、ようやく菓子を口にする余裕も生まれ」
「また、江戸時代に入ってから後も唐船やオランダ船を通じて砂糖輸入量は拡大」
「加えて琉球産の黒砂糖、讃岐国等で生産された国産砂糖の和三盆等の流通が始まり、庶民の間でも砂糖の甘さを楽しめる社会になりました」
「それからは百花繚乱、日本各地で様々な菓子が作られるようになりました」
「日本中の城下町や門前町で独特の和菓子を作り、京都の京菓子と江戸の上菓子が競い合うなどもあり」
「菓銘や意匠に工夫を凝らした和菓子が次々に作られます」
「現在食べられている和菓子の多くは、江戸時代に誕生したものです」

試食会参加者に、色華やかな干菓子や、水菓子、蒸し菓子、饅頭が配られる。

佐藤
「干菓子など、これまで上流階級の人たちにしか提供されていなかった和菓子が一般庶民の間でも食べられるようになります」
「季節感や花鳥風月などを表現した芸術的な菓子も多く出回るようになりました」
「食べて楽しむだけでなく、見て楽しめる和菓子として高い人気に」
「他にも、蒸し菓子、水菓子、南蛮菓子、飴など、実に様々な菓子が出回るようになります」

大旦那
「こうなると、ほぼ今と同じや」
「ただ、品が高いかな、季節感、花鳥風月」
五月
「京菓子ならではです」
「やはり、宮中や公家、茶家などに献上される献上菓子、都の菓子」

「目で見て楽しみ、舌で味や食感を楽しみ、鼻で香りを楽しみ、そしてその名前を聞いて耳で楽しむ、ただの甘い食べ物ではなく」

麗は、和三盆の干菓子を一口食べ、和菓子職人全員に感謝。
「本当に、私の思いつきで、ここまでのこと、ありがとうございました」
「相当のご苦労をなさったと思います」

すると司会者の佐藤が、満面の笑顔。
「いや、こちらこそです」
「普段の商売を離れて、ほんま、勉強になりました」
「いろんな職人、若い職人と一緒に、店の枠を超えて試作」
「いろんな菓子を試行錯誤」
「それも、実に楽しゅうて」

佐藤に続いて、様々な感想が述べられる。

「特に砂糖がない時期の工夫は、勉強になりました」
「おそらく、素材の甘味を、充分に活かす努力」
「今は、つい砂糖に頼りますが」
「やはり、手に入るもので、誰かのために、少しでも美味しいものを作る、そして喜ぶ顔を見る、職人の心意気の基本のような」


麗は、晴れやかな笑顔。
「感動しました、その心意気」
「この試食会を契機として、また工夫すると、楽しいですね」

すると、職人たちから、うれしそうな声。
「当たり前です、今日は歴史の再現が中心」
「次は、この再現に、さらに工夫をします」
「面白いです、いろんな職人さんとも交流できて」

そんな声に包まれる麗を見て茜は思った。
「麗ちゃん、職人にも人気や」
「この評判が、京の街に広まる」
「全く何かするたびに、人気が高まる」
「そうなると、ボディーガードも必要かな、万が一あるし」

茜のそんな思いの中、麗は席を立ち、和菓子職人たちの輪の中に入ってしまった。
そして、麗を中心に、和菓子職人全員が笑顔でお茶を飲み、時代和菓子を食べている。
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