第323話佳子との蕩ける房事 詩織には不機嫌

文字数 1,127文字

風呂場の後、麗と佳子は夕食。

佳子も、恥ずかしいのか、違う話に移る。
「花園家の美幸様からご連絡がありました」
麗は奈々子のことと思い、少し緊張する。

佳子
「今のところ、全く不安はないようです」
「ただ、突然に落ち込むこともあるので、様子を見たいとのこと」
麗は、安心。
「また、近いうちに会うようにします、連絡も美幸さんにも、奈々子さんにも蘭にもします」

食事の後は、明日の予定。

「佳子さんの東京最終日ですので、お出かけをしましょう」
佳子は、満面の笑顔。
「はい、銀座方面でしょうか」

「何か食べてみたいと思うものはあるでしょうか?」
佳子は、答えが早い。
「東京風の洋食があればなあと」

麗の頭に浮かんだのは、超老舗。
「創業が明治28年の洋食店が3丁目に」
「ポークカツレツとかオムライスの元祖に近い」
佳子は、本当にうれしそうな顔になるけれど、麗はやわらかな顔。
「他にも老舗から名店まで、たくさんありますので、歩きながら選びましょう」
「銀座には、隠れた美味の店も多くあるので」

佳子は、麗の手を握る。
「うちは、麗様とご一緒できるだけでも、幸せ」
「そのうえ、銀座なんて、一生の思い出に」
麗は、「一生の思い出」とは、大げさと思うけれど、うれしそうな佳子の顔が、また眩しい。
そのまま佳子を見ていると、その顔が赤くなる。
「麗様、そう見られると、また・・・おかしゅうなります」
「もう・・・その愛らしい目と、指・・・それから・・・」


寝室に移り、全てが終わった後は、二人ともしばらく放心状態。
それでも佳子が蕩けたような声。
「気持ち良すぎて動けません」
「雲の上みたいで、ふわふわとして・・・少しでも動くと・・・また・・・」

麗も体力を使い切ったので、すでに眠い。
「佳子さん、このまま、寝ましょう」
佳子は「はい・・・幸せです」と小さな声。
そして、二人抱き合ったまま、朝まで起きることはなかった。

その後、朝食を終え、麗が高輪の家を出て少し歩き出すと、茜から電話。
「学園の詩織さんが、土日のいずれかに、どうしても二人きりで逢いたいって」
「土曜日は理事会やし」
「日曜日は下鴨茂神社への参拝、石仏の会議もあるしな」
麗は苦慮する。
「そもそも時間がないってわかっているよね」
「すごく強引と思うけれど」
茜も困ったような声。
「かろうじて空いているのが、土曜の夜か・・・日曜日の夜かなあ」
「隆さんの見舞いも、行くんやろ?」
「おそらく葵さんに出遅れて焦っとると思うけど」
麗は茜の苦慮に配慮した。
「とりあえず、土曜の夜を開けます」
「九条屋敷にお越しくださいと」
茜は「ありがとう」と、安心した声で電話を切るけれど、麗の顔は不機嫌。
「そこまでして逢ってどうする?まあ、今さら仕方ないけれど」
麗の顔に、再び能面が戻っている。
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