第244話お世話係の打ち合わせ 麻友が感じた不安

文字数 1,303文字

麗たちが、隆の見舞いをしている時間、九条屋敷では五月とお世話係たちの打ち合わせが行われている。

五月は、まず直美にねぎらいの言葉をかける。
「まずは、直美さん、最初で大変やったと思うけど、お疲れさん」
「麗様の顔色もよくなり、顔そのものが、やさしゅうなった」
「直美さんの功績や、感謝します」

直美は、顔を赤らめ、頭を下げる。
「いえ、麗様と皆様のご協力あってのことです」
「楽しい一週間を過ごさせていただきました」

五月は、次に佳子に声をかける。
「葵祭の後、東京へ、つまり火曜日に」
「今回は、久我山やのうて、高輪に」
「麗様も、まだ地理も勝手もわからん」
「不動産の麻友様としっかり連携を取っての対応をお願いします」

佳子は、少し緊張気味に頭を下げる。
「はい、心こめて、お仕えいたします」

五月が、直美に質問。
「特に食べるもので、困るようなことは?」
「お出ししたメニューは、全て報告はもらってあるけれど」

直美は、そのままを答える。
「ほぼ、完食なされました」
「最初に心配したようなこともなく」
「洋食も和食も、こだわりはないようです」
「味覚そのものは、素晴らしいものが」

五月は、少し心配そうな佳子の顔を見た。
「大丈夫や、佳子さん、この九条家での修行が役に立つ」
「麗様は、人の努力を理解する人や、心配せんでかまわん」

佳子は、また頭を下げている。


さて、不動産の麻友は、どうしても麗に伝えておきたいことがあった。
それもあって、麗が隆の見舞いに出向いている時間は、その旨を伝え、九条家屋敷のリビングで待機をさせてもらっている。
本当は、麗たちと一緒に見舞いに行きたかったけれど、さすがに見舞う人数も多く、見舞う対象の隆に、それほどの面識もないのも事実。
そして、他の関係筋の「嫁候補」から、「出過ぎたまねを」と言われることも気にかかり、そのまま待たせてもらうことにしたのである。

そして、それは、とても電話では話すべきではないと思う内容だった。
「どうも、奈々子さんの表情が変や」
「顔がもともと色白なのは知っとる」
「しかし、今は青白い、目に力がない」
「いや、身体全体に力がない」
「あれは、身体の中というよりは、心に病があるのでは」

どうしても不安があるので、タブレットで心の病気を様々、検索する。
「あの沈んだ顔、身体の動き」
「食欲もないとか、蘭ちゃんが言うとった」
「そうなると・・・もしかして・・・難しい・・・あの病?」

そうこうしている間に、麗たちが戻って来た。
「麗だけに」と伝えてあったので、麗だけがリビングに入って来た。

麻友は、麗に頭を下げた。
「申し訳ありません、どうしても直接お伝えしたくて」
麗は、頷いて麻友の顔を見る。

麻友
「いきなりで申し訳ありません、奈々子さんのことなんです」
麗の表情が、少し厳しくなる。

麻友は言葉を続けた。
「顔がますます青白く、食欲も低下、ぼんやりとして、身体の動きに力感がありません」
麗は、気がついたらしい、声を低くして麻友に聞く。
「そうなりますと、うつ病の兆候が?」

麻友は、頷いた。
「はい、知り合いに、その患者がおりまして、最初は全く奈々子さんと同じような・・・」

麗は、ますます厳し気な顔、そして、その目を閉じている。
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