第242話麗の九条財団九段事務所の分析 高輪転居が決定

文字数 1,405文字

五月が麗の顔を見た。
「麗ちゃんの現時点での判断でいいけれど、何か疑問が?」
茜は、よくわからないようで、麗を見るだけ、黙っている。

麗は、恐縮気味に、話し出す。
「まだ、少ししか見ていませんが、間違っていたらごめんなさい」
「ここ、2、3年、執筆料、講演料、接待交際費と会議費の支出が増えていて」
「それと刊行誌、単発物の書籍、文化講演会の資料を照らし合わせてみて」
「著者もほとんど変わらず、その執筆回数も変化がない」
「講演会の講演者、講演会場も変わりなし」
「それなのに、何故、あれほど増えるのか、概ね3割程度で全般的に増えています」
「もちろん、見当違いの話であることを、望みます、まだ素人なので」

大旦那は腕を組んだ。
「講演者や執筆者への支払いを高くしたのか、回数も会場も変わらなければ」
「接待交際費にしては相手先と、接待場所」
「会議であれば、会議議事録の確認が必要となる」
「そうなると、業務監査やな」

茜が大旦那に聴く。
「会計監査やなくて?業務監査ですか」
大旦那は頷く。
「ああ、会計監査は、基本的には支出金額、支出科目の適性性を監査する」
「帳簿の合一がメインや、仕事の中身までは、細かく見切れない」

麗は慎重な表情。
「いずれにせよ、財団の九段事務所の担当理事となると、やはり責任が重い」
「その責任を果たすには、しっかりとした業務の把握が必要」
「そのためには、もう少し時間が欲しくて」

五月が麗の顔を見た。
「麗ちゃんの次のお世話係は、佳子や」
「佳子は公認会計士の資格もある、役に立つと思う」
麗は、頷く。
「助かります、本当に」
ただ、麗は「公認会計士の資格を取りたい」とまでは言わない。
それは、公認会計士の資格試験が難関であること。
そして、九条家の後継が公認会計士の資格試験に不合格などとも思われたくない。
あくまでも、首尾よく、合格した時点で、報告するのみと考えている。


そんな話し合いの後は、食堂にて、京懐石風のお昼。
大旦那と五月、茜が葵祭についての雑談、ほとんど今年の斎王代などの話。
麗は、斎王代に関心は何もなく、発言もしない、食べるのに必死。
何より、また「食が細い」などと言われ、九条家の料理人を落胆させたくない。

そんな昼食が終わると、大旦那の話通りに、不動産の麻友がお屋敷に入って来た。

再び、全員がリビングに戻り、麻友の報告を聞く。
麻友
「奈々子さんと蘭さんのお引越し、無事終了しました」
麗がお礼を言う。
「ありがとうございます、麻友さん、いろいろ神経を使っていただいて」
麻友は、明るい顔。
「はい、蘭様は、お元気でした、一生懸命、お引越し作業を」
麗は、少しホッとした顔。
しかし、「母」奈々子については聞かないし、麻友も言及しない。

これは、大旦那、五月、茜も理由はわかっている。
「おそらく、奈々子はぼんやりと座っているだけ、どうにもならない」
「それについては、麗も聞かないでもわかっている」

麻友は、大旦那と麗を見て、話題を変えた。
「大旦那様からお話がありました麗様の高輪へのお引越し」
「すでに準備が完了しております」
「高輪の新居は、いつでも入れます」

麗は考えた。
「引っ越しと言っても、教科書とパソコン、服ぐらい」
「冷蔵庫には、水と珈琲豆だけ」
そして麻友に即答。
「わかりました、全てお任せします」
麻友は、笑顔で即答。
「了解しました、早速連絡しまして、今日中に全てのお荷物の移管を済ませておきます」
麻友は、そのまま麗の手を握っている。
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