第116話茜、桃香、蘭の三人会話

文字数 1,269文字

桃香に慰められ続ける蘭に、茜から連絡が入った。
「今、結も逮捕や」

桃香が、即座に三人チャットに切り替える。
「茜さん、ほんまか?」

蘭は、ワナワナとなってしまい、声が出せない。

茜は笑い声。
「ほんまや、通報したのは、うちやもの」
「しっかりと準備をして」
「確たる証拠など、あり余っとるもの」

桃香の声が震えた。
「恵理さん逮捕の日を待っとった?」
「でも、九条のお屋敷に面倒は?」

茜は、明るい声で否定。
「そんなの、もともとあらへん」
「恵理さん、うちの父さんが死んだ途端、あっさり籍を抜いて」
「そのまま居座っただけやもの」

桃香は首を傾げる。
「よく大旦那が許した・・・」
「知らんかった」

茜は、低い声。
「もともとな、恵理さんは、旧宮家、その名だけが欲しかっただけや」
「結さんかて、うちの父さんの子やない、どこぞの馬の骨の男の子や」
「何やら。実はご乱行で有名な恵理さんやったらしい、実は極道か半ぐれの男かもな」
「しかし、結婚を発表してしまった以上は、京の狭い口さがない世界や」
「懸命に金を配って誤魔化しておいただけや、まあその当時の連中は、皆鬼籍や」
「今、海外で発覚したご乱行で絶縁、問題はあらへん」
「むしろ、ご乱行のまま、また住みつかれるほうが、不名誉や」
「結は、そのついでや、ドサクサに紛れて放り出す」
「もともと、挨拶に来る京都の街衆にも、ひどい高飛車」
「評判が悪い、金も払わん」
「大旦那もシカト決めとるから、借金地獄や」
「その腹いせで、家のもんに、殴る蹴るや、しっかり録画済みや」

桃香はそれでも不安。
「そやかて・・・ほんとに大丈夫なん?」

茜の声が強い。
「大旦那が主だった親戚衆に、少し前から因果を含めとる」
「もちろん、政界、財界の裏了解もばっちりとな」
「もう・・・敵はおらん」
「恵理さんも結もアホや、遊び惚けて、結局自分から尻尾出したんや」

黙っていた蘭が、口を開いた。
「茜さん、麗兄ちゃんと住む?」

茜の声がやさしくなった。
「しょうがないやろ、麗ちゃんが、京都に来ないとこれからのことが何も始まらん」
「まあ、早う、お屋敷にも慣れてもらって」
「嫁を取って、子供を何人も」
「そやなあ、香料店の跡継ぎも」

桃香の口が重い。
「麗ちゃん・・・難しいかも」
「うちの店に来た時も、京都の話題を嫌がったもの」

茜は落ち着いた声。
「当たり前や、麗ちゃんのその気持ちわかる」
「あれほど恵理さんと結に苛められれば、そうなるって」
「それをこれから、うちが、ゆっくり癒す・・・血のつながりのある姉、ぶっきらぼうやけど可愛い麗ちゃんや、うちもうれしいもの」
「麗ちゃんは、18になって、やっと血のつながりのある家で暮らせるんや」
「今までは可哀想やったけど、それがやはり一番、大切なことや」

桃香の声が湿った。
「麗ちゃんかて、やりたいことあるやろ?」
「何でもかんでも、お家の都合で、あっちにこっちにって」

蘭も泣き出した。
「離れたくないもん、一緒に住みたいもん」
「母さんも、もう麗兄ちゃんとは終わりになるかもって・・・」

蘭の泣き声の激しさと切なさに、茜と桃香は、しばらく声を出すことが出来なかった。
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