第347話麗は秘書室設置を了承する。

文字数 1,284文字

麗は、約2時間で会議を終了させた。
「一定の原案が、皆様の積極的、熱心なご提案でまとまりました」
「これについては、心より感謝いたします」
「来週の第一回調査準備会議にて、役所関係、お寺さんにも、相談をかけようと思います」

関係筋のお嬢様たちも、これ以上は詳細な検討が進まないことを納得していたので、会議自体はスムーズに終わった。
また、関係筋のお嬢様たちは「麗のピアノ」を所望したけれど、麗は「欠かせない用事がある」との理由で、丁重に断った。
残念そうな顔をされたけれど、麗としては、お嬢様たちのご機嫌を壊さないようにとの時間が朝から続き、身体も神経も疲れていた。
「これ以上は、見世物になりたくない、一人になりたい」が麗の本音だった。

さて、関係筋のお嬢様たち全員が九条屋敷を辞し、麗が自分の部屋に戻ると、茜が入って来た。
「麗ちゃん、連日お疲れさん」

麗は、頷く。
「ごめんなさい、言葉通り、疲れていて」
「とてもピアノなんて気分でなくて」
茜は、麗の肩を揉む。
「まあ、全部が全部、期待されても無理や」
「麗ちゃんが、参ってしまうほうが困る」
麗は、素直に答えた。
「今は・・・今時点だけど、難しいことを考えたくなくて」
「欠かせない用事も、実は大学の英語の課題くらい」
茜は、少し笑う。
「それだって大事や、学生さんやもの」
しかし、また心配そうな顔になる。
「マジに大変や、東京の大学生と、九条の次席理事やもの」
「心も身体も、休まる時もない」

麗は苦笑い。
「大丈夫だよ、何とかする」
「無理はしない程度に」

茜の次の言葉には、少し間があった。
「それでな、また麗ちゃんに頭を使わせて、申し訳ないけど」

麗は、やさしい顔。
「姉さま、言うだけ言って欲しい」
「それ、何?」
茜は、麗の顔を見た。
「前にも言ったかもしれん、麗ちゃんの仕事上の秘書や」
「事務的、実務的なことを、継続してこなす人がいいな、と」
麗は、悩み顔。
「どうやって決める?」
「やはり事情を知っている人だよね」
茜は頷く。
「関係筋のお嬢様から、選んだほうがいいかなと」
「そうなると・・・」
麗は考えた。
「葵さんは都内で、日中はほぼ一緒、だから京都でも、となると」

「葵さんでも、問題ないけれど、頭も切れる」
「でも・・・特別扱いし過ぎるのも」
麗は茜の真意を探る。
「そうなると、銀行の直美さんか、不動産の麻友さん?」
「実務的な人は、そうなるよ」
茜は、大きく頷く。
「その二人のどちらかでもいいし、両方でも役割分担すれば構わん」
「秘書室みたいな、感じかなあ、それを作りたい」
麗は、学園の詩織を思った。
「詩織さんも入れないと、問題になる」
「実務的な人では、全くないけれど」
茜も詩織については、困っていたらしい。
「詩織さんも、時々感情が先に立つ人や」
「言い出したら聞かんし」
「でもなあ、仲間外れも難しい」

麗は、難しい顔から、やわらかな顔に戻った。
「どうせ全員、今後も九条として付き合うことになる」
「いいよ、今後のために秘書室を作ろう、全員がそれぞれの動きに慣れておいたほうがいい」
「後は、役割分担とか、そのコントロールの話だから」

茜は一定の結論にホッとした顔になっている。
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