第495話美幸は幸せを実感  麗は引っ越しに気を配る

文字数 1,390文字

麗と今週のお世話係の美幸の生活は。当初から順調そのもの。
また、美幸は、自分より先にお世話係をつとめた人たちの高い評価を実感している。
「ほんま、何につけても、きれいなお人や」
「考えも深いし、頼りになる、何でも聞いてくれて」
「うちのほうが年上なのに、麗様のほうが大人や」

「でも・・・」
美幸は、顔も身体も赤らむ。

「毎日、麗様に可愛がられて、麗様を可愛がって・・・」
「うちもそうやけど、麗様も真っ赤な顔に・・・」

しかし、そんなことを思うと、ドキドキしてたまらなくなるので、必死に別のことを考える。
「恒例の最終日の外出デートは、上野の美術館と老舗レストラン」
「きれいなOLさん風に・・・スーツやなあ・・・」
「麗様にもシックなスーツを着させて、お上品に芸術を見て美食」
「ああ、そうやなあ、せっかくやから、麗様の大学があるお茶の水も歩いてみたいなあ」
「そうなると学生ルックもいいかも、悩むわ、ほんま」
「そして・・・夜はベッドで・・・思い切り麗様を・・・」
考えがそこに戻り、美幸は結局、赤くなっている。

麗も、この週の学生生活は平穏。
葵と一緒に講義を受け、古典文化研究室には昼休みや、放課後に顔を出す。
懸案の古今の歌と源氏の場面についての整理も進む。
また、葵もアパートに戻って懸命に勉強しているのか、話題にもついて来られるようになっている。

大学からの帰り道、麗は葵に声をかける。
「引っ越しはどう?困っていない?」

葵は笑顔で首を横に振る。
「いえいえ、不動産の麻友さんが全て手配」
「金曜日に一気に運ぶそうです」
「うちも、花園美幸さんも、奈々子さんも蘭ちゃんも、不動産の人の手際には感心します」
「それは多少は段ボール詰めはしますけれど」
「私たちは手荷物だけ持って、仕事やら学校に行って、金曜日に帰る家が違うだけ」
「何より、憧れのハイソな高輪住まい、はぁ・・・ワクワクします」
「やはり、一族の不動産、安心できます」

麗は、少し考えブツブツと言う。
「葵さんは、私と一緒の通学で、あまり困らない」
「奈々子さんと花園美幸さんは、白金高輪から九段下まで乗り換えなしで、心配不要」
「蘭は、路線が変わるのか、迷わないかな、大丈夫かなあ」

葵は、そんな麗の心配にクスクスと笑う。
「大丈夫ですって、蘭ちゃんは花の女子高生、元気そのもの」
「もうとっくに、ルート確認していますよ」
「飯田橋まで出て、東西線で中野にするみたいです」
「中央線は揺れるからと、言っとりました」

麗は、安心した顔。
「高輪も落ち着いた街だから、ゆっくり散歩しても面白いかな」
葵はまたうれしそうな顔。
「あら、楽しみです」
「そういう見知らぬ街、これから住む街、歩いてみると面白いお店とかありそうで」
「全員で散歩しましょう」

麗の顔が、またやわらかさを増す。
「品川も近い、ホテルにプールがあるかな」
「会員権を買おうかな」
葵の表情が、変わった。
「え・・・マジです?麗様」
「ほんまに?」

麗は、葵の表情の変化の原因がわからない。
「何か、困ることが?」
葵の顔が赤くなった。
「最近、食べ過ぎで、見せられんと・・・恥ずかしゅうて」

麗は苦笑い。
「そんなこと言ったら、蘭はどうなる?」
「風船玉みたいだ」
葵は、また笑う。
「そんなこと、蘭ちゃんの前で言わんと、蘭ちゃんは食べ盛り、育ち盛り」
「うちも美幸さんも、蘭ちゃんにつられて食べて・・・共犯かも」

麗は、応えようがなくて、難儀している。
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