第219話長く激しい交情の後 麗と直美

文字数 1,125文字

ベッドでの長く激しい交情が終わった。
麗は裸の胸を上下させている。
直美は、その胸に自分の腕をかけたまま、しばらく動けない。
「まだ目が回っとる」
「身体の芯からあふれて、少し動けん」

それでも麗の胸を少しなでる。
「きれいなお肌や」
「うちより、きめ細やかかも」

荒い呼吸がようやく、おさまった。
「麗様、無理やりでした」
「どうしても欲しくて」

麗は、表情を変えない。
「うん」と答えたまま、しばらく声を出さない。
直美は、その沈黙が不安。
もしかして、責め過ぎて、麗の気分を害したのか、怖くて麗の顔を見ることが出来ない。

ようやく麗が動いた。
腕を伸ばして、直美を抱いた。
「麗様、うれしゅうございます」
直美は、涙が出た。

麗は、言葉では、何も言わないようにと思った。
この先、様々なお世話係と関係するかもしれない。
それは、直美もわかっているはず。
それがわかっていて、自分も直美にとっても、下手な言葉を言ったところで、どこに真実味があるのか。

「不倫も何もない」
麗は思った。
そもそも正式な妻がいないのだから、不倫は成立しない。
それでいて、恋人の関係でもないことは、明らかと思う。
麗に直美に対する恋心は、何もない。
求められて、そのままに身体を重ねた、麗にとっては、それでしかない。
茜から言われた「女に恥をかかせないで」の言葉が重い。
そうなると、女を満足させるのも、自分の役目なのか、そんな責任さえも感じている。
お世話係の顔も人数も、考えないことにした。
「多過ぎて、どうにも考えられない」
「まだ、直美を知っているに過ぎないし、この時点では何とも言えない」
「そもそもベッドが一つ、それも九条家の意向となれば、どうにもならない」

直美は麗の腕を取った。
そして、麗の手を自分の胸に押し当てる。
麗も抵抗はしない。

直美は、少し麗を困らせたくなった。
「麗様は、お胸がお好き?」
「どうですか?私の胸」
と、そのまま麗の手をつかみ、上下左右に動かす。

麗は、予想通り、困ったような顔。
「直美さん、どう答えていいのか」

それでも、懸命に考えている様子が、直美には面白い。
「好きなら好きって言えばいいのに」
「この考えている顔が可愛い」
「最初見た時は。怖いかなと思ったけれど、よく知ると面白くて仕方ない」

懸命に考えていた麗が。ようやく答えた。
しかし、それにしても、麗らしい答えだった。

「直美さんの胸が美しいのは、見ればすぐにわかります」
「それ以上に、ほ乳類だから」
「最初に目にして、肌で感じるものだから」

直美はあ然、そしてプッと吹きだしてしまった。
「アハハ!褒められているの?」
「でも、ほ乳類か!それは、その通り!」
「もーーー!麗様!」
「どうして、そういうお答え?」

直美は、そのまま麗の顔を、豊かな胸で包み込んでいる。
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