第475話政治家候補者たちとの2回目の面談(1)

文字数 1,721文字

夕食の後は、大広間にて、政治家候補者たちとの2回目の面談。
九条家の理事会メンバーに加えて、街衆の主だった顔役も面談の席に着く。

司会の三条執事長が前回の経緯等を説明する。
「前回の面談の中で、世界有数の歴史都市、観光都市である京都と、現実の市民の生活の良好な関係を安定的にするための、具体的な施策を考えるよう、候補者様たちに依頼をしました」
「その依頼の中で、候補者それぞれの得意分野を生かし、共同作業として、具体案を示して欲しいとの、麗様のお考え」
「本日は、皆様のお手元に、その共同作業の結果を資料としてお配りいたしました」
「その資料に基づきまして、候補者の皆様、説明をお願いいたします」

三条執事長の司会を受けて、まず総務省官僚が高田と自己紹介、一番手として説明を始める。

「本日は、このような貴重な席を設けていただき、誠にありがとうございます」
「私たち4人は、幸いにも、次期国政立候補予定者として認められ、その4人で共同作業、京都の現状把握、検討を行ってまいりました」
「まず、総務省官僚として、申し上げます」
「司会の三条様のお話にあった通り、世界有数の歴史都市、観光都市である京都と、現実の市民の生活の良好な関係の確立は、地方自治に目を配る総務省としても、重要な課題」
「その中での問題点は、特に観光客のマナーの問題」
「写真を撮ろうと、個人の家にまで入り込む、ゴミを捨てて行く」
「注意しても、言葉がわからない国籍の人もいる」
「あるいは注意したほうが、身の危険を感じてしまう」
「警察に言っても、迷惑をかけて来た相手が特定できないから、と捜査をしない」
「結局は、泣き寝入りになる」
「観光業者には確かに金は入るけれど、その一方、市民は多大な迷惑を被っている」

総務省高田の話が納得できるらしく、面談出席者全員が頷いている。

続いて、政治学を専門とする女性教授、佐藤と名乗り説明を始める。
「さて、観光客のマナーに問題がある、と言って、全ての観光客を京都から締め出すことは、事実上は不可能なこと」
「法律的にも不可能、観光客需要により生活している多くの市民も収入が閉ざされ、路頭に迷うことになります」
「寺社衆も、観光客からの入場料収入で、庭園を整理しているのですから、それが無くなれば、結局は庭園も荒れてしまう」
「地方自治体も、税収が減り、その分の市民サービスも低下、悪循環と化します」
「その中で、どうやって増え続ける観光客をコントロールするのか」
「どの方法でコントロールすれば、市民生活との共存において、効果的なのか、あるいは実害が少ないのか、それを検討するべきであると思うのです」

これも、納得できる話らしく、面談出席者全員が頷いている。

続いて、若手の弁護士が藤村と名乗り、説明を始める。
「様々、観光客の動向を分析してみました」
「特に、団体客の自由行動になりますが、これは日本人であれ、外国人であれ、同じ傾向があります」
「旅行雑誌、ネット情報に掲載された店、界隈に、集団で行きます」
「言い換えれば、それに掲載されない場所は、やはり旅先で道不案内の心配があるのか、相当数が減ります」
「それは、私たちが、特に海外旅行に行く際に、事前に情報がある店や場所には行くけれど、そうでない店や場所は、滅多に行かないと同じこと」

面談出席者の中で、賛同する声があがる。
「ほんまです、観光客と一見してわかりますが、同じ店にばかり入って行く」
「例えば、中華料理店で、それほどの名店でなくても、たまたま雑誌やらネットに出て、そこに集中、極端な行列もで発生しとります」
「少し離れた所に名店があっても、そっちは、全く入らない」

最後に、銀行の元支店長が小川と名乗り、説明を始める。
「そのような現地調査、分析を経て、4人で検討いたしました」
「やはり、まず京都の観光地の中でも、個人の住宅地が近接している場所については、行政、観光業者に十分な理解と申し入れを行い、配慮を求める」
「情報提供も住民の生活に配慮した一定の制限が必要」
「観光客へのマナー周知も、様々なツールを使い、強める」
「地味な施策ですが、これを継続することが、第一かと」

面談出席者が、ほぼ全員頷く中、麗は腕を組んで、考え込んでいる。
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