第469話麗と可奈子の浅草、下町散歩(1)

文字数 1,121文字

翌日金曜日の午後3時、麗と可奈子は浅草駅に到着。
雷門を見て、賑やかな仲見世を歩く。

可奈子は、とにかくウキウキとしている。
「高輪もハイセンスでお洒落ですが、ここもまた楽しゅうて元気が出ます」

立ち止まっては揚げ饅頭やせんべい、ジュースを買い、麗にも渡して来るので、麗は苦笑。
「夕ご飯が食べられなくなるよ」

しかし可奈子は、笑う。
「そういうのは、別腹と言いまして」
「あ、人形焼きや、美味しそう」
と、買い求めてしまう。

その後はまっすぐ進み、浅草寺。
可奈子
「うち、池波正太郎先生の大ファンなんです」
「池波先生も、この浅草はよく書いていて」

麗も可奈子に合わせる。
「大衆小説と言われているけれど、文章力も高いし、人間の心の機微もしっかり書き込んである」
「ただ難しいだけの、頭でっかちの自称文豪よりも好きかな」
「難解な言葉を使えば、偉いと思っている作家もいるけれど」

浅草寺参拝を済ませ、お目当ての寄席に向かう。
途中、いかにも下町らしい飲み屋を見る。

可奈子
「ほんま、下町ゆう感じで」

「可奈子さんみたいなお嬢様では、どうなの?」
可奈子
「これはこれで、ワクワクします」
「とても京にいれば、難しゅうて」
「とても、こんな界隈歩けません」


「昭和レトロみたいな感じだね」
「もつ煮、焼き鳥、ラーメン、ビール、焼酎」
「テーブルに置かれた競馬新聞とか」
可奈子が麗の手を握る。
「昭和レトロかどうか・・・夕食は入りたい店が・・・」
麗は可奈子の視線の先を見る。
「ああ、あの老舗の洋食屋さん?」
可奈子は、本当ににっこり。
「はい!今日も暴飲暴食します、ご覚悟を」
麗も、思わず笑い、可奈子の手を握り返す。

さて、程なく寄席に到着。
麗が説明。
「ここは、入場券を払って入れ替えがないから、ずっといられるみたい」

可奈子は、少し頷いただけ、そのまま売店に進む。
「いろんな落語家さんのグッズ、笑点グッズ、落語の本とか、それをお土産に」
「それと浅草ですので、雷おこしも買って発送します」

麗は、これもお世話係さんたちの、いつものお土産選びなので口を出さない。
それでも貴重な部類に入る浅草演芸ホールでの土産物になるので、目の付け所に感心したりする。

さて、お目当てのホールに座ると、様々な芸人が出て来ては、次々に芸を披露する。
落語、ジャグリング、漫才、マジック、そして落語。
若手の芸人から、相当の年輩まで出て来るけれど、さすがに全員が芸達者、飽きさせることがない。
麗が隣の可奈子を見ると、腹を抱え、涙を流して笑っている。
そして芸人が引っ込むたびに、大きな拍手。
「ほんま、関東の笑いが、こんなに面白いなんて、想像以上です」

そんな可奈子に安心したのか、能面の麗も、いつの間にか、笑いの世界に引きずり込まれている。
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