第358話五月から、麗の「祖母」についての連絡
文字数 1,169文字
全ての講義が終わり、麗が高輪の家に帰ると、涼香は連絡事項があると言う。
「土曜に、お屋敷で麗様に、お目通りしたいというお方が」
麗は、少々面倒。
銀行の直美と話をするだけでも神経を使う。
それ以前に、京都に戻ることでも、気が重くて仕方がない。
麗は、それでも涼香に聞かなければならない。
「その面談希望者は、どなたですか」
涼香
「はい、鈴村様とおっしゃられるお方、七十代の女性の方になります」
麗は、首を傾げた。
七十代女性、鈴村という関係者は、九条家のPCにはなかった。
そうなると、どういう関係なのか、全く予想がつかない。
涼香は、それ以上は答えられない様子。
「詳しくは、五月様から、後で麗様に連絡が」
麗も、そう言われては、涼香に聞き返すことはできない。
五月が絡んでいるので、不安な相手ではないと思う。
しかし、どんな理由で、麗に面談を申し込んできたのか、全くわからない。
また、麗としても、初対面の七十代の女性に、何を話していいのか、これも全くわからない。
その五月からの連絡は、涼香との夕食後にあった。
五月
「麗ちゃん、毎日、お疲れ様」
麗
「いえ、皆様のおかげで、順調に暮らしております」
五月は、そのまま本題に入った。
「涼香から話があったと思うけれど、鈴村さんとの面会の件」
麗は、ただ、「はい」と、五月の次の言葉を待つ。
五月の声は、低く、ゆっくりとしたものになった。
「その鈴村さんは、麗ちゃんの、血縁の人」
麗の顔が、一瞬にして厳しくなる。
宗雄、奈々子、蘭と暮らして来たけれど、それは、ほとんど家族とは言えないような、心の冷えた生活の連続。
幼い蘭との、たわいもない話だけは、面白かったけれど。
今は、本来の九条家に戻り、様々にお世話をされる生活。
過去の生活は、「血縁のない人」とのものであると理解し、できれば記憶からも捨て去りたいと思っている。
それが今になって、「知らなかった血縁の話」となるので、どうしても身構えることになる。
五月は、ゆっくりと言葉を続ける。
「鈴村さんは、麗ちゃんの、実のお母さんの由美ちゃんの、母親」
麗は、頭がクラクラとなるけれど、必死に言葉を返す。
「そうすると・・・おばあ様?」
五月の声が湿った。
「うちもな、何とか・・・麗ちゃんの顔を見せてあげたくて」
「酷い、酷過ぎる九条家やったけど」
「恵理が手を下したとは言え」
麗は、とても面倒とは言えなかった。
「わかりました、出来る限り、手厚いお迎えを」
何を言われるかわからないけれど、誠心誠意、温かく迎えようと思う。
五月
「大旦那も了解しとる」
「そろそろ、ええやろ、と」
麗が、少し黙っていると、五月は続ける。
「まあ、慰謝料がわりではないけど、大旦那はあの事件以来、生活費とかいろんな面倒を見て来られた」
そして、五月の声が、また湿った。
「お母さんの由美ちゃんの墓参りを、一緒に」
麗は、唇をキュッと結んでいる。
「土曜に、お屋敷で麗様に、お目通りしたいというお方が」
麗は、少々面倒。
銀行の直美と話をするだけでも神経を使う。
それ以前に、京都に戻ることでも、気が重くて仕方がない。
麗は、それでも涼香に聞かなければならない。
「その面談希望者は、どなたですか」
涼香
「はい、鈴村様とおっしゃられるお方、七十代の女性の方になります」
麗は、首を傾げた。
七十代女性、鈴村という関係者は、九条家のPCにはなかった。
そうなると、どういう関係なのか、全く予想がつかない。
涼香は、それ以上は答えられない様子。
「詳しくは、五月様から、後で麗様に連絡が」
麗も、そう言われては、涼香に聞き返すことはできない。
五月が絡んでいるので、不安な相手ではないと思う。
しかし、どんな理由で、麗に面談を申し込んできたのか、全くわからない。
また、麗としても、初対面の七十代の女性に、何を話していいのか、これも全くわからない。
その五月からの連絡は、涼香との夕食後にあった。
五月
「麗ちゃん、毎日、お疲れ様」
麗
「いえ、皆様のおかげで、順調に暮らしております」
五月は、そのまま本題に入った。
「涼香から話があったと思うけれど、鈴村さんとの面会の件」
麗は、ただ、「はい」と、五月の次の言葉を待つ。
五月の声は、低く、ゆっくりとしたものになった。
「その鈴村さんは、麗ちゃんの、血縁の人」
麗の顔が、一瞬にして厳しくなる。
宗雄、奈々子、蘭と暮らして来たけれど、それは、ほとんど家族とは言えないような、心の冷えた生活の連続。
幼い蘭との、たわいもない話だけは、面白かったけれど。
今は、本来の九条家に戻り、様々にお世話をされる生活。
過去の生活は、「血縁のない人」とのものであると理解し、できれば記憶からも捨て去りたいと思っている。
それが今になって、「知らなかった血縁の話」となるので、どうしても身構えることになる。
五月は、ゆっくりと言葉を続ける。
「鈴村さんは、麗ちゃんの、実のお母さんの由美ちゃんの、母親」
麗は、頭がクラクラとなるけれど、必死に言葉を返す。
「そうすると・・・おばあ様?」
五月の声が湿った。
「うちもな、何とか・・・麗ちゃんの顔を見せてあげたくて」
「酷い、酷過ぎる九条家やったけど」
「恵理が手を下したとは言え」
麗は、とても面倒とは言えなかった。
「わかりました、出来る限り、手厚いお迎えを」
何を言われるかわからないけれど、誠心誠意、温かく迎えようと思う。
五月
「大旦那も了解しとる」
「そろそろ、ええやろ、と」
麗が、少し黙っていると、五月は続ける。
「まあ、慰謝料がわりではないけど、大旦那はあの事件以来、生活費とかいろんな面倒を見て来られた」
そして、五月の声が、また湿った。
「お母さんの由美ちゃんの墓参りを、一緒に」
麗は、唇をキュッと結んでいる。