第186話麗のお世話係連絡と、それぞれの反応

文字数 1,418文字

麗がお屋敷の直美を「お世話係一番手」として、都内のアパートに戻った話は、早速、五月から、麗の「母」奈々子に連絡がなされた。

五月
「うちとお世話係全員で順番を決めて、最初は直美に」
奈々子
「そう、うちも、もうすぐ一緒のアパートに入るけど」
「そうなると、ますます出る幕なしや」
五月
「まずは麗ちゃんの食生活安定や、それを見ながらお世話係も決まる」
「大旦那のご意向もある」
奈々子
「なるべく、いらん邪魔せんようにするよ、情けないけど」
五月は、その奈々子の言葉には答えず、連絡を終えた。

五月は、そんな奈々子の弱い反応が気に入らない。
「なんや、その態度は」
「普通なら、喜んで顔を見に行くやろ」
「よほど、麗ちゃんに、やましい思いがあるんか?」
「まあ、長い付き合いやけど」
「奈々子は、人はいいけど、弱すぎる」
「宗雄がいなくなったから、本来は気兼ねなくお世話できるはず」
「それを邪魔せんようにって、まるで他人事や」
「麗ちゃんの顔が暗いのは、奈々子にも責任があるんや」

五月は、奈々子の次に、吉祥寺の香苗に連絡をする。
香苗は、うれしそうな声。
「そうなん、直美ちゃん?一度遊びに来て欲しいわぁ」
「おもに洋食の子やろ?」
「うちは、麗ちゃんの健康回復が、まず望みや」
「それが果たされれば、何の文句もない」

五月が次に連絡した鎌倉の香料店の瞳も、同じような反応。
「ああ、それは良かった」
「麗ちゃんも考えたな、お世話係を特定せず、順番なんて」
「とにかく、最初はつまらん嫉妬を生まん」
「お世話係も競争で大変やけど、実力も鍛えられる」

さて、親世代は、そんな状態になるけれど、子供世代の蘭、桃香、美里たちは、実に複雑。

「麗ちゃんとお世話係さんは、どんな関係になるのかな」
「また、気難しいことを言って、困らせるとか」
「お世話係さんが、麗ちゃんの魅力に取りつかれるかもしれない」
「それで取り合いになると、ますます麗ちゃん、機嫌が悪くなる」
「怒るとムッとして、何も話さなくなるし」
「はぁ・・・麗ちゃんって、面倒、好きだけど」

桃香は、落ち込んでいる。
「あーーー・・・いいところまでいったのに」
「お世話係さんって、みんな格上のお嬢様」
「関係筋のお嬢様たちが、お嫁さん候補の筆頭」
「そうなると、お世話係さんたちは、その二番手、いいところお妾さん」
「うちは・・・それにもなれん」
「ましてや、気難しい麗ちゃん、面倒で話もしてくれん」

美里も困惑。
「桃香に先を越された上に、お世話係さん?」
「麗ちゃんが個人で鎌倉に来る時を狙うしかないかな」
「それは難しいかな、かろうじて・・・日向先生のお宅に来た時とか」
「それは・・・実にレアケースになる」
「とにかく麗ちゃんと、しっかり話をしたい」
「お香の話も麗ちゃんは、詳しいし」

その麗は、京都の香料店の、かつての「叔父」晃から、連絡を受けていた。
「麗様、無事に都内にお戻りのようで、それから隆への心温まるお見舞い、ありがとうございました、今は小康状態で、麗様のお陰です、店の者も全員感激しとります」

麗は、「麗様」との言い方には、違和感があるものの、
「はい、いろいろ、ご心配をおかけしまして、隆さんにもよろしくとお伝えください」と無難に返す。

晃の要件は、香料店の取材の話だった。
「それで、高橋先生の娘さんとの話、香料店の取材になりますが」
「鎌倉の瞳の店で、よろしいでしょうか、気心も知れていますので」

麗は、特に反論もない。
「はい、わかりました」と素直に答えている。
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