第406話葉子の不安
文字数 1,286文字
翌月曜日、いつもの通り京都駅から新幹線に乗ると、これも毎週恒例で、葵と花園美幸も目の前に座る。
葵が笑顔。
「麗様、まあ本当に大活躍で」
花園美幸も続く。
「鈴村さんとのお話、石仏会議のお話、政治家さんにも、それから昨晩の時代和菓子」
ただ、麗は「はぁ・・・」程度、実は少し眠い。
それを察した葉子は、程よく身体を寄せ、麗の倒れそうな身体を支えている。
葵は話題を変えた。
「ところで、麗様、三条執事長様から連絡がありましたけれど」
「あの竹田議員と浜村秘書さんは、今期で終わりの方針とか」
麗は眠かったけれど、懸命に目を開ける。
「そうですね、昨日の和菓子職人さんの話でも、よからぬ噂が多くて」
それでも、葵の表情に何かを感じた。
「もしかして、葵さんの家に泣きついたとか?」
葵は頷く。
「親がきっぱりと断りました」
「確かに財団にも悪い噂しかなく」
「特に浜村秘書さんは、金のセビリが酷くて」
「金を出した時だけ、低姿勢で」
「少しすると、メチャ高飛車に変わる」
花園美幸も頷く。
「まあ、浜村秘書さん、とにかくしつこくて」
「出身のテレビ局の取材を増やすとか、何とかお願いできないかとか」
「もちろん、親がガンとして断りましたけれど」
「病院も困っていたんです」
「浜村秘書さん、忙しい病院の事務室に入り込んでは、看護師さんを口説こうとするし」
「単にテレビに出ていたアナウンサーと言うだけで、人気があるとか、自分は偉いとか、大きな勘違いをしているようで」
麗は厳しい顔に変わった。
「政治家の中で、特にマスコミ出身者は、勘違いしている人が多い」
「いろんな政治家とか、スポーツ、芸術家、学者、その世界で努力して地位を築いた人に取材をする、それは職務なのに、自分が偉いとか、同格のような錯覚をする」
「テレビ画面に映るのも単なる仕事なのに、それで顔が知られれば、自分が有名人で偉いと誤認」
「ところが、本人は取材対象以上の勉強も努力もなく、準備スタッフが用意したシナリオに沿って話しているだけ」
「そんな中身のない人で、支援者に迷惑をかけるだけの人は、推薦も後援もする必要はない」
「何をされても、温情をかける気持ちはありません」
「評判が酷すぎて、推薦する、後援するほうが、我々にはマイナスでしかない」
葵はホッとした顔。
「ほんま、麗様の言う通りです、さすがです」
「それから、その我々って言葉、大好きです」
花園美幸は、麗の手を握る。
「運命共同体です、ほんま」
麗は少し笑う。
「運命共同体・・・先に言われました」
「言い換えれば、同じチームですね」
葉子は、そんな麗の自然な笑顔が、実にうれしい。
九条家に戻った当時とは、格段に違う。
最初は自分の湯女も共寝も厳しく断られて、寂しいような自信喪失を感じたけれど、今は自分の隣で、笑顔を見せている。
しかし、葉子には、まだ不安がある。
万が一、こんな厳しいことを言う麗に、自分が気に入らないことをしてしまう、あるいは口に出してしまうことによって、麗が再び能面に戻れば、自分だけではなく、九条家や京の街全体の落胆につながってしまう。
新幹線が新横浜を過ぎ、品川に近づくにつれて、葉子の不安も高まっている。
葵が笑顔。
「麗様、まあ本当に大活躍で」
花園美幸も続く。
「鈴村さんとのお話、石仏会議のお話、政治家さんにも、それから昨晩の時代和菓子」
ただ、麗は「はぁ・・・」程度、実は少し眠い。
それを察した葉子は、程よく身体を寄せ、麗の倒れそうな身体を支えている。
葵は話題を変えた。
「ところで、麗様、三条執事長様から連絡がありましたけれど」
「あの竹田議員と浜村秘書さんは、今期で終わりの方針とか」
麗は眠かったけれど、懸命に目を開ける。
「そうですね、昨日の和菓子職人さんの話でも、よからぬ噂が多くて」
それでも、葵の表情に何かを感じた。
「もしかして、葵さんの家に泣きついたとか?」
葵は頷く。
「親がきっぱりと断りました」
「確かに財団にも悪い噂しかなく」
「特に浜村秘書さんは、金のセビリが酷くて」
「金を出した時だけ、低姿勢で」
「少しすると、メチャ高飛車に変わる」
花園美幸も頷く。
「まあ、浜村秘書さん、とにかくしつこくて」
「出身のテレビ局の取材を増やすとか、何とかお願いできないかとか」
「もちろん、親がガンとして断りましたけれど」
「病院も困っていたんです」
「浜村秘書さん、忙しい病院の事務室に入り込んでは、看護師さんを口説こうとするし」
「単にテレビに出ていたアナウンサーと言うだけで、人気があるとか、自分は偉いとか、大きな勘違いをしているようで」
麗は厳しい顔に変わった。
「政治家の中で、特にマスコミ出身者は、勘違いしている人が多い」
「いろんな政治家とか、スポーツ、芸術家、学者、その世界で努力して地位を築いた人に取材をする、それは職務なのに、自分が偉いとか、同格のような錯覚をする」
「テレビ画面に映るのも単なる仕事なのに、それで顔が知られれば、自分が有名人で偉いと誤認」
「ところが、本人は取材対象以上の勉強も努力もなく、準備スタッフが用意したシナリオに沿って話しているだけ」
「そんな中身のない人で、支援者に迷惑をかけるだけの人は、推薦も後援もする必要はない」
「何をされても、温情をかける気持ちはありません」
「評判が酷すぎて、推薦する、後援するほうが、我々にはマイナスでしかない」
葵はホッとした顔。
「ほんま、麗様の言う通りです、さすがです」
「それから、その我々って言葉、大好きです」
花園美幸は、麗の手を握る。
「運命共同体です、ほんま」
麗は少し笑う。
「運命共同体・・・先に言われました」
「言い換えれば、同じチームですね」
葉子は、そんな麗の自然な笑顔が、実にうれしい。
九条家に戻った当時とは、格段に違う。
最初は自分の湯女も共寝も厳しく断られて、寂しいような自信喪失を感じたけれど、今は自分の隣で、笑顔を見せている。
しかし、葉子には、まだ不安がある。
万が一、こんな厳しいことを言う麗に、自分が気に入らないことをしてしまう、あるいは口に出してしまうことによって、麗が再び能面に戻れば、自分だけではなく、九条家や京の街全体の落胆につながってしまう。
新幹線が新横浜を過ぎ、品川に近づくにつれて、葉子の不安も高まっている。