第418話麗と可奈子

文字数 878文字

しかし、麗は、なかなか思い出せない。
「お逢いしたことがあるような、ないような」と口を濁す。

可奈子は、またクスッと笑う。
「もう、忘れん坊さんや、麗様」
そして言葉が追加された。
「その昔、蘭ちゃんと桃香ちゃん、美里ちゃんと」

麗は、ようやくおぼろげな記憶。
「もしかして、香料店で?」
一緒に遊んだ中に、「可奈子」と言う名前のお姉さんがいたような記憶がある。

可奈子は麗の手を握る。
「はぁ・・・もう・・・」
「ずっと見ていても気づいてもらえず」
「お風呂で裸になっても」

麗は返事に困る。
「あまり意識して、人を見ることはなく」
「まして、お風呂でなど」

可奈子は麗の困った顔が面白い。
「うちは・・・普通サイズ、お風呂では目立ちませんしねえ」

麗は、また困る。
「そもそもぼんやりとしている人間なので」
「それに、10年以上も離れていて、お互いに大人になって」
と、平凡な答え。

可奈子は、そんな麗にますます接近。
「麗様、ここで」と握った手を離す。

麗が察して、ふんわりと抱くと、可奈子は力強く抱き返す。
可奈子
「これも10年?もっと?お久しぶりで」
麗は首を傾げる。
「そんなことありました?記憶にない」

可奈子は麗の肩に顔を埋めた、
「プールで・・・おぼれた時」
「麗様が飛び込んで助けてくれて」
「年下で、身体も小さかった麗様に抱かれて」


「それは・・・あったかなあ」
「でも、抱いたといいうよりは、抱えたでは?」

可奈子
「いえ、とにかくほっとして」
「安心して、うれしくて」

麗と可奈子は、一緒にベッドに座った。

「ごめんなさい、あまり覚えていなくて」
可奈子
「命の恩人です、麗様は」

「それは、おぼれている人を見れば当然なので」
可奈子
「私、何もお礼もできなくて、ずっと思っていました」

「いいよ、そんなの」
可奈子
「いけません、私の気が済みません」

麗は表情をやわらげ、話題も変える。
「都内に戻ったら、蘭とか桃香、美里と逢えるよ」
可奈子の顔が、パッと輝いた。
「あらーーー!うれしい!」
「女子会が復活ですね!」
「ドキドキしてきました」

麗がホッとした瞬間だった。
可奈子は、その隙をついて、麗をそのまま押し倒している。
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