第163話「麗のお世話係」 五月と茜の相談

文字数 1,115文字

麗との「面談者情報」打ち合わせを終わり、茜は母五月と話をしている。


「麗ちゃんは、お嫁さん話を嫌がっとる、仕方ないけど」
五月
「それは当たり前や、まだ18やもの」
「それに、それほど女好きでないし」

「女が好くタイプやね、ぶっきらぼうやけど、芯が強い」
五月
「言葉が一つ一つ深いし、それをよく考えると思いやりもある」

「今夜の葉子は、母様から?」
五月
「二度目の麗ちゃんは、少しほぐれるから」
「夕食も半分も食べとらん、だから甘い物でもと」

「小さなクッキーを二個だけや」
五月
「それでも、少しでも食べることが大事や」

茜は感じた不安を五月に言う。
「葉子は、麗を気に入っとる」
「問題は、他の女の子との関係や」
「あまり親しくさせると、下手な嫉妬を受ける」
五月もそれには頷く。
「上手に調整が必要やけど」
「麗ちゃんの趣味、つまり古文とか文学に合うのは、葉子が一番や」
「他の女の子の専門は・・・料理、音楽、演劇、踊り、テニス、美術、西洋史」
「葉子以外に、かろうじて趣味が合うのは、音楽の美幸と西洋史の涼香や」

「なるべく穏便に仲ようしたいから、お相手の順番をしっかりとやね」
「えこひいきは、問題になる」

五月は、少し考え、茜の顔を見る。
「それでな、麗ちゃんは、連休明けに東京に戻るやろ?」

「そうやね、それは止められん」
五月は難しい顔。
「奈々子さんと蘭ちゃんの引っ越しが、それに間に合わん」
「そうなると、また、もとの食生活に戻る」

茜は不安になった。
「香苗さんに聞いたけれど、一度倒れたとか」
「大学の司書の人に、たまたま助けてもらったとか」
五月
「それが心配や、もう九条麗様なんや」
「九条麗様が東京で、栄養失調で倒れたなんて困る」
「恥ずかしいと言う前に、九条家にとって実に危険や」
「そうかと言って、桃香の性格を、今一つ麗ちゃんは好かんと思う」
「美里が冷静やけど、麗ちゃんは知らんぷりしたって聞いたし」


「そうなると?どうする?」
五月
「麗ちゃんの健康保持を考えるのが一番」
「東京での食事とお世話全般係を、ここのお屋敷から一人選ぶ」
茜は、ため息をつく。
「選ぶ時間も少ないし、そもそも麗ちゃんは嫌がるよ」
五月は首を横に振る。
「嫌がろうと何だろうと、また倒れられても困る」
「麗ちゃんのためでもあるし、九条家のためでもある」

茜も、その理屈を言われては、納得するしかない。
「そうなると、人選やね」
「今は、葉子が近づいておるけど」

五月は厳しい顔になった。
「女の子に勘違いはさせられんけど、あくまでも、お世話係」
「家柄も明日から面談するお相手よりは格下や」
「結婚相手やない」
「それが京都で暮らす女のしきたり、破ったらひどいことになる」

五月と茜の相談は、夜遅くまで続いている。
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