第487話大旦那は麗に宗雄の死を告げる。由美からの電話は無視。

文字数 1,395文字

夕食の後、大旦那は麗に宗雄の死を告げる。
「恵理の件も含めて麗は関わらんように」
「全ては、わしらが処置する、弁護士に指示してある」

麗は、厳しい顔。
「わかりました、ただ、今後の万が一のために、経緯とか事実関係を知っておくべきかと」
五月は頷く。
「弁護士に指示して端的に経緯の記録も残します」

茜が麗に声をかける。
「麗ちゃんが心配なのは、奈々子さんと、蘭ちゃんかな」
麗が頷くと、三条執事長と一緒に、香料店の晃が入って来て、話に加わる。

晃は麗に頭を下げた。
「大旦那様からもお話があった通りに、麗様は心配なさらんように」
「宗雄の遺体の処置、事後処置は弁護士に任せます、無縁仏になります」
「それから奈々子と蘭については、様子を見て、しばらくして私が引き受けます」
麗は厳しい顔のまま。
「宗雄の無縁仏は、仕方ない」
「奈々子は、どう思うのか・・・どうとも思わないのか」
「蘭が、情緒不安定になるかも」

大旦那
「全て片付いてから、奈々子と蘭には全ての事実を知らせて、因果を含める」
「時期的には、蘭が夏休みの時期」
「奈々子と蘭を京都に呼ぶ」
五月も厳しい顔。
「九条家としても、香料店としても、葬式を出してやる理由はない」
「九条家の後継、麗ちゃんのお父さんの兼弘さんと、お母さんの由美さんを殺し」
「麗ちゃん自身には、酷いことの限り」
「恵理にも宗雄にも、残るのは、恨みだけや」

大旦那が麗を諭す。
「前にも言うたけれど、麗が面倒を見るべきは、鈴村さんや」

麗は、頷くしかない。
違和感がないわけではない、しかし、それ以外の対応策を思いつかない。
それでも、「全ての事実と因果」を聞かされた時の、蘭の心を思いやる。
「グチャグチャに泣いて、俺にむしゃぶりつきたいだろうに」
しかし、難しい。
「ただ、俺は蘭の涙を受け止める立場か?」
「蘭は俺の実の両親を殺した宗雄の娘、もちろん蘭が悪いわけではないが」
「九条家後継として・・・うかつな対応は取るべきではない」

難しい話が終わり、麗は自分の部屋に戻った。
机の上に置いたスマホを見ると、着信記録がある。
「俺に用事があるわけではない、相手に用事があるに過ぎない」
「今の立場とすれば、まさに、うかつな、安易な対応は慎むべき」
麗がしばらく無視していると、またスマホに同じ番号からの着信。
それでも麗が、スマホを放置していると、今度は蘭から着信。

仕方なく麗が出ると、蘭は困ったような声。
「麗様・・・あの・・・由美ちゃんから電話が行ったかと」
麗は、苦々しい顔と声になる。
「ああ、アドレスから消してある」
「話をしたくないし、する必要もない、あんな自分勝手な女は嫌いだ」
「受験で東京にいるのに、バレンタインの菓子を受け取るとか、受け取らないで長話、そんな無神経極まる女だ」

「高校の同窓会の通知を出しても、戻って来るって」
「高校生まで住んでいた家は、もうないし」
「私に何も連絡がないって、怒っていまして」

「それで蘭は何と?」

「とにかく引っ越しをして、今は忙しい人にと」

「俺は由美と話をする気はない、今の立場を言う気はない、その必要もない」
「蘭も、由美に対応する必要はない」

「わかりました、私もアドレスから由美ちゃんを消します」
「田舎の友達のアドレスも全部消してあって、由美ちゃんだけを消し忘れていて」

麗は、「ああ、そうしてくれ」と蘭に頼む。
しかし、「宗雄の件」については、隠しておく以外には考えが見つからない。
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