第390話大旦那は麗に政治家に顔見せをさせると言う。

文字数 1,100文字

黒ベンツに乗り込むと茜。
「隆さん、麗ちゃんに彼女を紹介したかったんや」
「紹介できるほどに、心まで元気になって」

麗は、慎重な返事。
「それでも万が一もある、香料店も料亭部門も、九条グループの中に入れる」
「そのほうが、面倒が見やすい」
「経理とか決算は、万全を期すよ」

茜も頷く。
「そのほういいかな、この先、京の伝統と言ってもどうなるかわからん」
「バラバラに動いて経営に困って質を悪くさせるよりは」

麗は少し考えて、続ける。
「京文化、日本文化の良さを根本に、総合事業に」
「全ての事業が関連し合って、良いものを提供し合って、ますますその事業、関連する事業まで魅力を高められるような方向に」
「それが、いいかなと」

そんな麗の考えを聞きながら、葉子は思った。
「ほんま、よく考えられとる」
「都内で、お世話係の直美さん、涼香さん、佳子さんも、将来を保証されて、ますます仕事に気合が入って」
「うちも、個人秘書とはされたけど、もっと気合を入れないと」

少し黙った麗に茜。
「まあ、忙しいわ、麗ちゃん」
「ピアノも聴きたいけど、とてもお願いできん」

麗は苦笑い。
「まあ、遊んでいる時間が、ない」

運転手の三条執事長からも、声がかかった。
「麗様、お世話係だけでなく、私たちも含めて、ご指示をください」
「麗様が倒れたら困りますし」
「麗様の考え方、本当に素晴らしいと思うので、是非やらせていただきたい」

麗は、素直に頷く。
「はい、またそれも、考えます」

そんな話をしながら、麗の一行は、九条屋敷に戻った。
リビングに入ると、大旦那が相好を崩している。
「麗、ありがとな、晃と隆、恵子からお礼の電話や」

麗は、軽く首を横に振る。
「ただお見舞いしただけで、今日は彼女まで紹介してもらいました」

五月も笑顔。
「いや、麗ちゃんがお見舞いに行って、いろいろ話しかけて」
「隆さんも、生きる気力を取り戻したんや」
「麗ちゃんは、生きるお薬師さんやな」

茜も笑顔。
「あのキーボードもよかった、まさか隆さんが歌うとは」
「あのお見舞いから、グッと変わった」

麗としては、そんな褒められる自覚が全くないので黙っていると、大旦那が話題を変えた。
「麗、いろいろ忙しいけど、あちこちに顔見せをな」

麗は頷く。
「はい、それは、そろそろと思っていました」
「ただ、時間が取れなくて」と申し訳なさそうな顔。

大旦那は続けた。
「午後は、石仏の会議や」
「それを済ませて、夜にお迎えが来る」
「政治家や、そういう付き合いも大切」
「と言っても、九条が面倒を見たから政治家やけどな」

麗は、大旦那からの話でもあり、「はい」と従うのみ。
それでも九条家が後援する政治家、どこまでの人なのか、麗なりに確かめようと考えている。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み