第483話奈良小旅行(5)新薬師寺 麗の国宝、世界遺産論
文字数 1,373文字
新薬師寺は、光明皇后が夫聖武天皇の病気回復を祈願し、天平時代に建立した古刹。
当初は100人の僧侶が住み、七堂伽藍と東西二基の塔が立つ大寺。
その後に落雷や台風に逢い、諸堂を失い、現在は本堂だけが残っている。
本尊は国宝の薬師如来坐像、その周囲をこれも国宝の十二神将が薬師如来を守るかのように立ち並ぶ。
麗は黙って手を合わせているけれど、女性たちはやはり話好き。
「国宝鑑賞の旅やな」
「うちらも、全員ご先祖は藤原氏や、だからこのお寺にも関係がある」
「十二神将は十二支の守り神や、それぞれに」
「そやな、ご利益がありますように」
「その前に、薬師様のゆったり感が好きや」
新薬師寺本堂を出ても、女性たちの話は止まらない。
「何や、京都の緊張感と違う」
「歴史は深いけれど、のどかな感じが、ホッとする」
「大らかな、包み込まれるような」
「京都は、時に突き刺して来るような緊張感があるな」
麗は、ようやく口を開く。
「私たちの一行以外に、全く観光客がいない」
「観光客がいたのは、興福寺、春日大社、東大寺大仏殿だけ」
「これも観光パンフレットの影響か、ツアー客の場合は集合時間とかあって、あまり足を延ばさない」
茜が麗の言葉に反応する。
「そやな、麗ちゃん、昨日の政治家候補者との話でも、そんなこと言っとった」
「まさに、これが事実や」
「こんな国宝が並ぶお寺にも、観光客がおらん」
麗
「国宝とか、世界遺産と言っても」
「あくまでも文化財保護法から来ている」
「国の宝なので、歴史的価値と他に同じような物がないとか」
「同じような物がたくさんあれば、お宝にはなれない」
「その基準で選ばれている」
麗は、珍しく饒舌、話を続ける。
「国宝に一番多く認定されているのは、雪舟の水墨画」
「作品で国宝認定されている作品は6点。これは画家の中で最多記録」
「また重要文化財に認定されている作品は19点」
「選定する人が、雪舟好きだったとの説があるほど」
葵が感心したような顔。
「麗様、そんな授業受け取りませんが、ご自分で?」
麗は苦笑。
「単にそんな本を読んだから」
「国宝と世界遺産に関する本だった」
詩織
「難しそうな本を・・・うちは小説ばかりで」
直美
「でも、世界遺産も文化財保護法からとは・・・知識不足でした」
麻友
「その視点で見るんですね、さすがです」
麗は、恥ずかしいのか、うつむいて話を続ける。
「世界遺産にしろ、各国の文化財保護法が基本」
「つまり、良好な状態で、世界遺産として世界中の人に見てもらえることが大切」
「難しいのは、本来は一番遺産がある、あったはずの、イラクとかイランの中東地方」
「戦乱で壊され、世界遺産認定ができようもなく、治安が不安定過ぎて観光客を呼び込むなど、絶対に無理」
そこまで話して、麗は顔を上げた。
「日本では、そんなことにならないように」
「大げさな言い方かもしれない、みんなで守って行こうよ」
「国宝とか世界遺産関係なく、先祖からずっと守り続けて来たものと、心は大切にしたい」
茜は、そんな麗の言葉がうれしい。
「大事なことを言っとる、当たり前で誰でも考えとることやけど」
「麗ちゃんが言うと、みんな聞く、説得されてしまう」
「それと・・・麗ちゃん、また成長したような感じ」
「オーラみたいな・・・輝いて見える」
その麗は、歩き出す。
「そろそろ。おなか減ったかな、皆さん」
その言い方が面白いのか、全員が笑っている。
当初は100人の僧侶が住み、七堂伽藍と東西二基の塔が立つ大寺。
その後に落雷や台風に逢い、諸堂を失い、現在は本堂だけが残っている。
本尊は国宝の薬師如来坐像、その周囲をこれも国宝の十二神将が薬師如来を守るかのように立ち並ぶ。
麗は黙って手を合わせているけれど、女性たちはやはり話好き。
「国宝鑑賞の旅やな」
「うちらも、全員ご先祖は藤原氏や、だからこのお寺にも関係がある」
「十二神将は十二支の守り神や、それぞれに」
「そやな、ご利益がありますように」
「その前に、薬師様のゆったり感が好きや」
新薬師寺本堂を出ても、女性たちの話は止まらない。
「何や、京都の緊張感と違う」
「歴史は深いけれど、のどかな感じが、ホッとする」
「大らかな、包み込まれるような」
「京都は、時に突き刺して来るような緊張感があるな」
麗は、ようやく口を開く。
「私たちの一行以外に、全く観光客がいない」
「観光客がいたのは、興福寺、春日大社、東大寺大仏殿だけ」
「これも観光パンフレットの影響か、ツアー客の場合は集合時間とかあって、あまり足を延ばさない」
茜が麗の言葉に反応する。
「そやな、麗ちゃん、昨日の政治家候補者との話でも、そんなこと言っとった」
「まさに、これが事実や」
「こんな国宝が並ぶお寺にも、観光客がおらん」
麗
「国宝とか、世界遺産と言っても」
「あくまでも文化財保護法から来ている」
「国の宝なので、歴史的価値と他に同じような物がないとか」
「同じような物がたくさんあれば、お宝にはなれない」
「その基準で選ばれている」
麗は、珍しく饒舌、話を続ける。
「国宝に一番多く認定されているのは、雪舟の水墨画」
「作品で国宝認定されている作品は6点。これは画家の中で最多記録」
「また重要文化財に認定されている作品は19点」
「選定する人が、雪舟好きだったとの説があるほど」
葵が感心したような顔。
「麗様、そんな授業受け取りませんが、ご自分で?」
麗は苦笑。
「単にそんな本を読んだから」
「国宝と世界遺産に関する本だった」
詩織
「難しそうな本を・・・うちは小説ばかりで」
直美
「でも、世界遺産も文化財保護法からとは・・・知識不足でした」
麻友
「その視点で見るんですね、さすがです」
麗は、恥ずかしいのか、うつむいて話を続ける。
「世界遺産にしろ、各国の文化財保護法が基本」
「つまり、良好な状態で、世界遺産として世界中の人に見てもらえることが大切」
「難しいのは、本来は一番遺産がある、あったはずの、イラクとかイランの中東地方」
「戦乱で壊され、世界遺産認定ができようもなく、治安が不安定過ぎて観光客を呼び込むなど、絶対に無理」
そこまで話して、麗は顔を上げた。
「日本では、そんなことにならないように」
「大げさな言い方かもしれない、みんなで守って行こうよ」
「国宝とか世界遺産関係なく、先祖からずっと守り続けて来たものと、心は大切にしたい」
茜は、そんな麗の言葉がうれしい。
「大事なことを言っとる、当たり前で誰でも考えとることやけど」
「麗ちゃんが言うと、みんな聞く、説得されてしまう」
「それと・・・麗ちゃん、また成長したような感じ」
「オーラみたいな・・・輝いて見える」
その麗は、歩き出す。
「そろそろ。おなか減ったかな、皆さん」
その言い方が面白いのか、全員が笑っている。