第480話奈良小旅行(2)興福寺

文字数 1,384文字

麗の一行は、興福寺を見学。
興福寺は、藤原家の始祖藤原鎌足が天智8年(669)に重病を患った際に、婦人の鏡女王が回復を祈念して釈迦三尊像や四天王等の諸仏を安置するために造営した山階寺が起源。
その後は、壬申の乱後に飛鳥に都が戻った時に寺も移転、厩坂寺と名前を変えた。
そして平城京遷都とともに、藤原不比等により現在の地に移され、興福寺と名付けられた。
それが藤原氏の「氏寺」と言われる由縁となっている。

一行は南円堂に参拝後、北円堂は特別に参拝、その後は再建なったばかりの中金堂、美しい五重塔、東金堂を見学後、国宝館に入る。

様々な国宝や重要文化財が並ぶ中、八部衆、阿修羅像の前に進む。

「可愛いわぁ・・・ほんま」
「健気な美少年や」
「スタイルも、ほんま・・・きれいや」
「正面やと、悲しそうやけど・・・下から見ると、少し笑いそうな」
「帰りに阿修羅様グッズを買って帰る」
「他の八部衆も可愛いのがあるよ」
「ほんまや、子供みたいな顔もあるよ」
「仏像らしくない、そんな感じや」

女性たちがヒソヒソ話す中、麗は阿修羅像の正面に立つ巨大な千手観音像を見る。
「下から見上げると、右目から涙を流しているような」
「独特の重みがある観音様だ」

さて、国宝館の展示室を出ると、女性たちは阿修羅グッズを買い求める。
阿修羅Tシャツ、クリアファイル、メモ帳、ストラップ、ハンカチ、とにかく様々買っているけれど、麗は付き合わない、すぐに外に出てしまう。


それでも、約10分で全員が国宝館を出て来た。
買ったお土産を、サロンバスに置き、麗の周りに集合。
葉子
「貫主にお目通りをなさりますか?」

「いや、突然来て、仕事の邪魔をしても、それは良くない」
「お布施だけは収めて、後でお礼の連絡をします」
葉子は麗の腕を引く。
「いや、そうもいかないようです、こちらに三条執事長と歩いて来られます」
「連絡はしてありましたので」

貫主に歩いて来られては仕方がない。
麗も、少し歩み寄り、挨拶。
「九条麗と申します、本日は素晴らしい経験をさせていただきました」

貫主はにこやかに合掌、麗に頭を下げる。
「いやいや、麗様、こちらこそ、初めまして」
「大旦那様からも、お話がありました」
「また、京の寺社衆からも、素晴らしい評判を聞いております」

「いや、お恥ずかしい話で、まだまだ未熟者なので」
貫主
「いえいえ、石仏調査、素晴らしいご発想です」
「寺社衆も本当に喜んでおります」
「よろしかったら奈良でもいかがですか?」
麗は苦笑
「いや・・・すごい話になりますね、それこそ、数え切れない」
「今日は日帰りですが、一度はゆっくり来て、歩いてみたいと思っています」
「奈良公園一帯、西の京、飛鳥村、桜井、斑鳩、たくさん見どころがあります」
貫主
「その際には、是非、またお立ち寄りを」
麗も貫主に合掌、頭を下げる。
「はい、ご連絡いたします、お付き合いしていただけたら、幸いです」

貫主は、それ以上引き留めることはしない。
おそらく、今日の予定も把握しているのだろう。
麗の一行が、春日大社に歩いて行くのを、合掌しながら見送る。

三条執事長
「なかなか控え目な麗様ですが」
貫主
「いやいや、考えが実に深い、それでいて謙虚、だから人の気を集める、引き付ける」
「素晴らしい後継さんです、これで当分は安泰、安心しました」
「もっと話がしたくてたまらない」
麗は、興福寺の貫主にも気に入られてしまったようだ。
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