第368話花園美幸のブログ、山本由紀子とデートの約束

文字数 1,263文字

涼香から聞いた「葉子を個人秘書に」の話を考えながら、麗は大学への登校の途につく。
「問題はないと思う、お世話係たちの間で、嫉妬などの気まずい雰囲気がなければ」
「葉子さんが都内に来た時のサブは、京都での人選に任せる」
「いずれにせよ、決まるのは京都に戻ってからかな」

大学キャンパスに入ると、葵が駆け寄って来た。
「おはようございます、麗様」
「蘭ちゃんも奈々子さんも元気で」
「花園美幸さんが、拍子抜けするほど」
麗は、それで少し安心。
「ご報告ありがとうございます」と、麗らしい地味な返事。

ただ、麗はそこで考えた。
美幸の能力を無駄にしているのではないかと。
そこまで考えて、葵に相談。
「葵さん、財団のブログ、増やせないかな」

葵は、「はぁ・・・問題はないかと」と、麗の言葉を待つ。

「美幸さんの時間が余っているのなら、何か健康関係の連載をどうかなと」
「本人に聞いてみないとわからないけれど」
葵は、ふんふんと頷く。
「なかなか名案です、思いつきませんでした」
「誰も反対する人はいません、むしろ読みたいのでは?」
「早速、お話しましょうか?」

「一度、九段下の事務所で、相談しましょう」
「たまには、私も事務所に出向かないと」
葵は、本当にうれしそうな顔。
「わぁ・・・皆、喜びます」
「もっともっと、いらして欲しくてと、皆申しております」
「麗様、お忙しいので、なかなか声もかけられず」

葵の仕事は早い。
麗が、少し黙った間に、早速、美幸と財団の九段事務所に話をつけてしまう。

「美幸さんも、九段事務所も、いつでもOKと」
「うちも、いつでもOKです」
「あとは、麗様の時間に合わせます」

麗は、その展開の早さに驚くけれど、やはり慎重。
「来週のいずれかの日に」
「それまでに、美幸さんには、素案を考えてもらって」
「ただ、急ぐことはなくて、しっかりとした準備を」

花園美幸のブログの件は、それで一旦終了。
麗と葵の一限目の履修科目は、別になるのでお互いに別の教室に進む。
つまり、麗は珍しく一人の状態になった。
麗が時計を見ると、講義開始まで20分近くある。
「たまには図書館にでも」
「司書嬢の山本由紀子さんの顔も見たい」
麗は、それを思った時点で、本当にやわらいだ顔になる。

麗が図書館に入ると、司書山本由紀子が、待ち構えたように手招き。
「ねえ、麗君、来週に空いている日を教えて」
「この間、デートする約束したでしょ?」
麗の顔が一瞬にして赤くなる。
「あ・・・いつでも・・・」
山本由紀子は、クスクス笑う。
「その赤い顔、可愛い、じゃあ、来週の水曜日ね」
「夕方4時半にここに来て、江戸ならではのお食事」
麗は、早速手帳に書き込んでいる。

山本由紀子は、すぐに話を切り替える。
「今日は探したい本は?」
麗も、即答。
「古今和歌集の、鈴村八重子さんの本があればと」
山本由紀子は、興味深そうな顔。
「へえ・・・・私も、あの先生の本、大好き」
「きれいな文で、憧れちゃうなあ」
「いいなあ、麗君、いい趣味している」

「祖母」鈴村八重子が褒められ、麗はとにかくうれしい。
山本由紀子に対しても、ますます好感が強まっている。
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