第384話麗が思いついた跡地利用計画は

文字数 955文字

茜は麗の表情の変化に気がついた。
「麗ちゃん、思いついたん?」

麗は、慎重。
「いや、まだまだ、口に出すほどでは」
「思いつきの段階、もう少し考えないと」
と、思いついたことまでは否定しない。

しかし、茜は、どうしても聞きたい。
「ほんのさわりだけでも」
と目を輝かせて、しかも笑顔。

麗は、素直に言うことにした。
茜の笑顔には、なかなか抗しがたい。

麗は茜の顔を見た。
「まだ、他にも思いつくかもしれないから、おかしかったら言って」
茜は、笑顔のまま。
「うん、まずは言って」

麗は真面目な顔。
「宿泊施設、小さな研修ができる機能を備えて」
「泊めるのは、縁が深い人」
「研修については、誰か講師を呼んで使う場合もあるかもしれない」
「この九条屋敷でもできるけれど、歴史的建造物」
「あまり改造をするのは、どうかなあと」

茜は、少し考える。
「そやなあ、誰も困らんし」
「使い方次第で、九条の役に立つかなあ」

麗は言葉を足した。
「地味と言えばそうなるけれど」
「あくまでも、一つの素案」
「他にも思いつくかもしれない」

そんな話を終えて、夕食。
早速、大旦那から、麗に言葉がかけられる。
「なあ麗、恵理と結の家を取り壊す」
「その跡地や、何か考えてくれ」
「麗に任せる、忙しくて大変やけど」

麗は、「はい」と頷くだけ。
まだ、思いついただけの話を、大旦那に言うとまでは考えていない。
大旦那の気持ちとしては、恵理と結との完全な決別とか、新しい建物の話で気分転換をしたいのかな、と思う。

五月からも話があった。
「全部、麗ちゃんの考えで構わん」
「今風の、目を見開くようなでも構わんけど」
「できれば、九条家の、未来につながるような」

そんな話が続くと、茜が含み笑い。
「さっきな、麗ちゃんの部屋で、それとなく」
「そしたら、麗ちゃんらしいことを言うとった」

大旦那が麗を見て面白そうな顔。
「聞きたいな、それ」
五月も笑顔で麗を見つめてくる。

麗は、仕方がない。
茜に話した「思いつきの話」をすると、大旦那はホッとしたような、うれしそうな顔。
「全く問題なし、どんどん計画せい」
「使い方次第で、ほんま役に立つ」
五月も笑顔。
「早速、不動産の麻友さんと相談やね」

麗が、あまりの早さに驚いていると大旦那。
「最初の宿泊者と、講師は八重子さんや」
「それだけが、わしの願いや」

これには能面の麗が、顔を赤くしている。
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