第460話気がつかれていた麗 可奈子は麗を抱きかかえる

文字数 1,065文字

普通の状態に戻った麗は部屋を出て、リビングに入った。

可奈子が麗の顔を覗き込む。
「先ほどよりは、顔色が」

麗は、「少し眠かっただけ」と、シンプルな答え。
万が一でも、可奈子に心配をかけたくない。

可奈子は、少し難しい顔。
「心配でお顔を見に行ったら、すでに眠っておられました」
「お疲れでは?忙し過ぎて」

麗は、その質問をスルー。
「汗をかいたので、シャワーを」
可奈子は麗の腕を引く。
「シャワーもできますが、すでにお風呂の用意ができております」
「全てお任せください」

麗は「気がつかれたかな」と思うけれど、頭痛の事実は言わない。
そのまま風呂場に入り、可奈子に身を委ねる。

実際、可奈子の洗い方は、ていねい。
少しマッサージもされるので、身体がほぐれるような感じ。
「こうやって、独占できるのも、お世話係の楽しみ」
「いいお肌で・・・押し付けたくなります」
「毛深くなく・・・お肌負けそう」

麗は恥ずかしいので、身体をずらそうとするけれど、すぐに戻される。
「今さら何を恥ずかしがるんです?」
「うちは、目をそらしません、ですから麗様も」


風呂から出ると、可奈子はよく冷えたノンアルコールビールを麗に。
「相当汗をかかれておりましたから、このほうが」
麗は一気に飲み干してしまう。
「美味しい、あまり飲まない飲み物なのに」
可奈子は、少し笑って、またノンアルコールビールをグラスに注ぐ。
「一度、麗様が成人されたら、飲み明かしたいなあと」
「今は、ノンアルコールビールですが」

麗がグラス半分ぐらい飲むと、可奈子が隣に座った。
「麗様、体調が悪かったのでは?」
「そう見えましたけれど」

麗は、「いや、それほどではなく」と、あいまいな返事。

可奈子は、身体を寄せた。
「少しでも体調を崩されたら、隠さないで欲しいんです」
「うちも心配、八重子様も心配、九条家全部、京の街が全部心配になります」
「もっと酷くなったら、困ります」

麗は苦笑。
「案外、頑固な身体で、寝れば回復します」

しかし、可奈子は引かない。
「うちに、たくさん、心配をかけてください」
「それがしたくて、ここにいるんです」
「うちに限らず、お世話係さんたち、皆そうですが」

麗は、また苦笑。
「どうも、可奈子ちゃんには、かなわない」
「子供の頃から」

可奈子は、うれしそうな顔。
「麗様が小さな頃は、よくお相撲を取って」
「簡単に押し倒しました」
「蘭ちゃんが怒るし、桃香ちゃんと美里ちゃんが、引きはがしに来るし」

麗が「そうだったかな」と可奈子を見た次の瞬間だった。

「さあ、邪魔者はいません、麗様、ご覚悟を」
可奈子は、あっという間に麗を抱きかかえている。
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