第106話由美のこと 恵理と「父」の行先
文字数 1,279文字
麗は、高校のクラスメイト、幼なじみでもある由美のことも思い出した。
「泣かせたって、母さんにも蘭にも怒られたけれど」
「恋人でも何でもない」
「そもそも受験期の一番大事な時機に、義理チョコを手渡ししたいって、無神経極まるのではないか?」
「義理チョコと一生に関わる受験と、どっちが大事なのか、何故考えない」
「それを考えずに勝手に泣いて、家族に文句を言いつけるって、正気の沙汰ではない」
「幼なじみと言っても、単に家が近所で、通学の時に一緒ってだけだ」
「話のレベルが、実に低い女だった」
「菓子とかタレントとかアニメとか」
「話を聴いてくれてありがとう?合わせる気が無いから聞き流しただけだ」
「そんな関係で、義理チョコを手渡しでって、何の意図?」
「東京にいて、地理的に受け取れない相手に断られて、泣く?」
「受験をやめて東京から帰って義理チョコを受け取りに来いって言うのか?」
麗はとっくに決めていた結論を思い出した。
「実に無神経極まる女だ、どうでもいい」
「それを怒る母も蘭も、何を考えているのか」
麗は、様々、考えていたけれど、明日の英語の授業もある。
もう一度、提出課題を再点検した後、眠ってしまった。
さて、麗の「母」奈々子と、その実家京都の香料店の当主で兄の晃とは、深刻な電話を行っていた。
奈々子
「兄さん、亭主が行方不明や」
晃
「そか・・・何でや・・・」
奈々子
「海外らしい、パスポートを持ち出して・・・プイといなくなって」
晃
「行先は?言わん?」
奈々子
「いつもそうや、言わん、プイといなくなる」
奈々子の声が湿った。
「また、麗の貯金を下ろして・・・」
晃
「ああ、わしも何度も説教したけれど、その場はヘラヘラとわかりましたと」
「俺が麗に送った金もあるんや」
奈々子
「ほんま・・・すまんなあ・・・逆らうと・・・何するかわからん」
「まずは麗に・・・麗が血だらけになれば・・・うちとか蘭にまで」
晃
「麗の顔が暗いのは、それやろな」
奈々子は、涙が出て止まらない。
「ごめんな・・・大旦那に申し訳が立たん・・・うちでは無理やった」
晃
「そう泣くな・・・あの時は、麗の命が危なかったんや」
「お前が預かってくれなかったら・・・」
「今まで、酷い目にあっても・・・死なないだけ・・・ましや」
「俺の隆も・・・ダメやしな」
奈々子
「麗は、うちのこと、どない思うとるんやろ・・・」
「こんな母で・・・」
晃
「まあ、しゃあない、九条の大旦那が決着つけるやろ」
「逆らえんし・・・仰せの通りにとしか」
奈々子は九条の恵理が気になった。
「なあ、兄さん、恵理さんは、今?」
晃はうなった。
「わからん、確実には日本にはおらん・・・とだけ」
「九条の大旦那がぽろっと漏らしたんは、少し前からイタリアのフィレンツェで豪遊しとるらしいが」
奈々子の声の質が変わった。
「それ・・・ほんま?」
晃も奈々子の声に緊張する。
「おい・・・何や?何かあるんか?」
奈々子の声に怒りがはっきりとした。
「馬鹿亭主の机の上に、フィレンツェのガイドブックや・・・」
晃の声が、低くなった。
「調査するで、それから九条の大旦那に連絡する」
日頃は温厚な晃の顔も、怒りに包まれている。
「泣かせたって、母さんにも蘭にも怒られたけれど」
「恋人でも何でもない」
「そもそも受験期の一番大事な時機に、義理チョコを手渡ししたいって、無神経極まるのではないか?」
「義理チョコと一生に関わる受験と、どっちが大事なのか、何故考えない」
「それを考えずに勝手に泣いて、家族に文句を言いつけるって、正気の沙汰ではない」
「幼なじみと言っても、単に家が近所で、通学の時に一緒ってだけだ」
「話のレベルが、実に低い女だった」
「菓子とかタレントとかアニメとか」
「話を聴いてくれてありがとう?合わせる気が無いから聞き流しただけだ」
「そんな関係で、義理チョコを手渡しでって、何の意図?」
「東京にいて、地理的に受け取れない相手に断られて、泣く?」
「受験をやめて東京から帰って義理チョコを受け取りに来いって言うのか?」
麗はとっくに決めていた結論を思い出した。
「実に無神経極まる女だ、どうでもいい」
「それを怒る母も蘭も、何を考えているのか」
麗は、様々、考えていたけれど、明日の英語の授業もある。
もう一度、提出課題を再点検した後、眠ってしまった。
さて、麗の「母」奈々子と、その実家京都の香料店の当主で兄の晃とは、深刻な電話を行っていた。
奈々子
「兄さん、亭主が行方不明や」
晃
「そか・・・何でや・・・」
奈々子
「海外らしい、パスポートを持ち出して・・・プイといなくなって」
晃
「行先は?言わん?」
奈々子
「いつもそうや、言わん、プイといなくなる」
奈々子の声が湿った。
「また、麗の貯金を下ろして・・・」
晃
「ああ、わしも何度も説教したけれど、その場はヘラヘラとわかりましたと」
「俺が麗に送った金もあるんや」
奈々子
「ほんま・・・すまんなあ・・・逆らうと・・・何するかわからん」
「まずは麗に・・・麗が血だらけになれば・・・うちとか蘭にまで」
晃
「麗の顔が暗いのは、それやろな」
奈々子は、涙が出て止まらない。
「ごめんな・・・大旦那に申し訳が立たん・・・うちでは無理やった」
晃
「そう泣くな・・・あの時は、麗の命が危なかったんや」
「お前が預かってくれなかったら・・・」
「今まで、酷い目にあっても・・・死なないだけ・・・ましや」
「俺の隆も・・・ダメやしな」
奈々子
「麗は、うちのこと、どない思うとるんやろ・・・」
「こんな母で・・・」
晃
「まあ、しゃあない、九条の大旦那が決着つけるやろ」
「逆らえんし・・・仰せの通りにとしか」
奈々子は九条の恵理が気になった。
「なあ、兄さん、恵理さんは、今?」
晃はうなった。
「わからん、確実には日本にはおらん・・・とだけ」
「九条の大旦那がぽろっと漏らしたんは、少し前からイタリアのフィレンツェで豪遊しとるらしいが」
奈々子の声の質が変わった。
「それ・・・ほんま?」
晃も奈々子の声に緊張する。
「おい・・・何や?何かあるんか?」
奈々子の声に怒りがはっきりとした。
「馬鹿亭主の机の上に、フィレンツェのガイドブックや・・・」
晃の声が、低くなった。
「調査するで、それから九条の大旦那に連絡する」
日頃は温厚な晃の顔も、怒りに包まれている。