第392話予定が立て込む麗は、疲れ気味

文字数 1,308文字

リビングに戻り、三条執事長が今後について説明をする。
「石仏調査については麗様の原案をもとに、次回の会議までに細目は整備しておきます」
「本日の会議で、方向性はお示ししてあるので、円滑に進みます」
「調査者への記念Tシャツ、タオル、飴などの手配も、余分に準備しますので、ご心配は不要です」

茜が麗に声をかける。
「麗ちゃんは、何かと忙しいから、あまり細々としたことは任せて」

麗が、申し訳ないような顔をすると、大旦那。
「麗は、大まかな方針を示すだけで構わん」
「あとは全体の管理と、問題が発生した場合の対応や」

五月も大旦那に続く。
「ご心配なく、問題が発生するような重労働でもなく」

三条執事長が話題を切り替えた。
「本日の予定といたしまして、大旦那様と麗様は、祇園にて国会議員や首長とのご会食」
「先方事務所からの送り迎ええとなります」

麗は、ただ頷くだけ、表情は変えない。
そもそも、それ以外の反応ができない。
それでも、高校生まで過ごした田舎を思い出す。

「まあ、市会議員と言うだけで、そのガキは威張り放題」
「その子供にペコペコする担任、教頭、校長まで」
「市会議員の息子が、同級生を苛めようが、何をしようが、見て見ぬふり」
「それに文句を言った奴は、校長室で逆にお説教」
「市会議員と言っても、単に町工場の親父」
「入学式やら卒業式に顔を見せ、いつも酒臭い」
「要するにPTAから教師連中まで飲み仲間」
「そのガキの内申も、特別加算の噂もあった」
「テストの成績とはかけ離れた有名校に進学していたし」

麗が、そんなことを思い出していると、大旦那が麗に声をかけた。
「この間の葵祭りに出席した議員と首長たちや」
「麗は一度顔見せしとるけれど、話をしたいと言って来た」
「まあ、今後の後援期待やろ」

茜が、笑う。
「つまり、今後は麗ちゃんが、嫌って言えば、当選は危うくなる」
「あちらさんも、心配しとるんや」

五月が茜を補足。
「そもそも九条家に嫌われたなんて噂が広まれば、落選確実」
「それに、京の街衆に期待が大きい麗ちゃんに失礼でもしたら、どうなるか」

麗は、そこまで言われて、ようやく口を開く。
「よく知らない人種なので、話を聞くだけにします」
「好きも嫌いも、後援するもしないも、その後に考えます」


リビングでの話を終え、麗は葉子と自室に戻った。
葉子は、少し心配な様子。
「麗様、ほんま、大変ですねえ」
「日々、忙し過ぎ、神経使い過ぎで、疲れておられるのに」
「夜になっても、また神経を使われます」

麗は、素直に「うん」と頷く。
「ただ、名前を言って、座って食事しているだけならいいけれど・・・」
「今日はそれだけにします」

葉子は麗の後ろに回り、背中をトントンと叩く。
「麗様、ベッドにうつ伏せに」
「まずは、ガチガチの背中と肩をほぐします」

麗は、ここでも葉子に素直に従い、ベッドにうつ伏せになる。

葉子は、ゆっくり目にマッサージを始めた。
「ほんま、思った通りです」
「カチコチやないですか・・・この首の付け根、肩、肩甲骨のところ」

麗は、葉子のマッサージ開始3分後には、すでに眠い。
「・・・そうかな・・・葉子さん・・・大変だったら無理はしないで」

それを言うのが関の山、5分後には寝息を立てている。
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