第387話麗の嫁候補者分析 お世話係たちとの混浴は賑やか

文字数 1,298文字

麗は直美の視線を感じてはいたけれど、口に出した言葉は、予定通りの当たり障りのないものに終始した。
直美からの話は、なるべく真摯に聞くものの、決定的な答えは出さず、慎重を貫く。
ただ、直美の個性は、嫌いではない。
明るく、頭の回転が速い財団の葵。
しっかり者で気が利く不動産の麻友。
相当な強引、我がままお嬢さんの学園の詩織。
様々なタイプがある中で、銀行頭取の娘直美は、堅実さと頭の良さを話していて感じる。
ただ、麗自身、誰とどうなるかとは思っていない。
何しろ、「九条家後継としてのお付き合い」の時間が短過ぎる。
「どう考えても、詩織とは疲れる」程度であって、何らかの必要があるか、あるいは相手から言われなければ、滅多に付き合う気もない。

直美を玄関で送った後は、恒例となってしまったお世話係たちとの混浴。

「はぁ・・・麗様、今日はお疲れ様でした」
「もう涙ボロボロのご対面もあり」
「そや、泣けたわぁ」
「銀行の直美さんも必死に麗様を見とりました」
「でも、麗様はいつも通り、はんなりや」
「それが、気を引く、追いかけたくなる」

いろんな大騒ぎをしながら、順番に麗を洗うけれど、麗は以前のように目を閉じない。
普通に目を開けて、なされるがままになっている。

そんな麗の視線が面白いのか、またお世話係が歓声をあげる。
「あらーーー・・・慣れました?」
「そやねえ、戻られるたびやもの」
「うちは、昨日からダイエットしたけど」
「あはは!変わらん、そんなで」
「あなた、お尻成長しとるよ」
「それを言わんと、麗様に見られると恥ずかしゅうて」

麗は「何とものん気な話だ」と思うけれど、麗自身も実に気楽。
洗いが終わり、ゆっくりと湯舟に沈むと、またお世話係たちに囲まれる。

「京都の職人さんの話とか、土産物屋さんのお話でしたねえ」
「難しい話しとるなあと、心配になりました」
「銀行の直美さんらしい、お堅い話やなあと」

そんな話をしてくるので、麗も反応。
「なかなかね、実態を見ないと」
「時間があれば、伝統的な職人さんとか」
「京野菜の生産者とか」
「土産物屋さんの実態を見たいなと」
「でも、なかなか時間がない」
「だから、はっきりとした話もできなくて」
お世話係たちには、あまり本音を隠さない。
頭に浮かんだことを、そのまま話す。

するとお世話係たちは、またザワザワ。
「そうですねえ、忙し過ぎです」
「ほんま、ねえ、肩も凝るでしょう」
「うちらも協力します、考えます」
「なあ、何か・・・」

麗は、実に助かると思ったけれど、そのザワザワを手で制した。
「よしましょう、ここ、お風呂です」
そして、珍しく、笑う。
その麗の笑顔に、思わず目が引き寄せられたお世話係たちに、一言。
「だって、こんな、すっぽんぽんで、難しい話できません」

顔を見合わせたお世話係は、手を打って大笑い。
「あはは!面白い!」
「それはそうや、せっかくのお風呂や」
「肩凝らしてどうする?」
「ほら、その胸、揺らし過ぎや、麗様呆れとる」
「ええやん、自信あるよ」
「え?うちも負けん・・・尻はあかんけど」
「あはは!笑える、これでお腹、締まるやろか」
「無理やん、そんな簡単には」

そんな大騒ぎが続き、麗はなかなか湯舟から出られなかった。
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