第117話麗の田舎者論は京都人にもつながる 

文字数 1,628文字

麗は、「母」との電話の後、ベッドに寝ころび、いろいろと考える。
周囲の自分に寄せる期待や不安には、全く関心が無い。
それでも、母と蘭は田舎には住めなくなるくらいは理解している。

「とにかく、田舎の人間はテレビ好きだ」
「テレビで言うことは、全て真実と思う」
「アナウンサーや三流コメンテーターも区別はない」
「かえって、真実を述べる学者の難しい解釈は聴かない」
「あくまでも、自分の脳で、しかも世間が狭い田舎者の脳で判断できる三流コメンテーターの言葉に飛びつく」
「そうなると、テレビで逮捕報道が流れ、国家公務員として近所でも威張っていた父は、それ見たことかと、こき下ろされ」
「その責めは、母にも蘭にも及ぶ、一家同罪で、村八分だ」
「そもそも田舎者、田舎社会に個人の人権思想はない、理解も出来ない」

時折、地域の運動会に出た時や、道で話していることを聞いた時のことを思い出した。

「とにかく、周囲を乱すものは、全て悪」
「新しいものも、全て悪」
「家柄、先祖、親戚の自慢が大好き」
「例えば、その地方出身で、都会の会社で重役になった人がいた場合、その人の親とか家をコトサラに褒める」
「そして、その自分がその人の知り合いであることを、得意げに自慢する、単に道ですれ違った程度であっても」
「それでは、貴方はどうなのですか、貴方は何が出来るのですか?と聞くと、黙ってしまう」

「他人のうわさ話、特に悪い話を好む」
「他人が困れば自動的に、自分のメリットになるわけではないと思うけれど、それを言うと、極端に嫌そうな顔をする」

「困っている人を助ける気持ちもなく、ただ、貶めているだけは大好き」
「他人を非難することで、自分がエライと勘違いするだけ」
「結局、自分が何もしないで、ただ他人の失敗にグチャグチャ言うだけで終わる」
「全く進歩が無い」

「とにかく自分たちの集団からはみ出るとか、和を乱すことは、許さない」
「自分たちの集団に近付いてくる人の、品定めをするのが、相当な重要課題にして、決して欠かさない、自分たちの集団に頭を下げる人間か、従順であるかが最重要課題」

「新しいことにトライする人を後押しすることはない。逆にありとあらゆる失敗談を飽きるほどに教えて、未来への芽を摘むことだけに力を注ぐ、マイナス思考だけの人たち」

「付き合わないのが、一番だと思うけれど、田舎者は困った時は、必ず助けてくれて当たり前という顔をする」

そこまで、不愉快なことを思い出した時、麗は気がついた。
「そういえば、京都人にも、ほとんど当てはまる」
「となると、京都人も、大いなる田舎者か」
「つまり、発展性のカケラもない連中」
「ただただ、自分の保身と、他人の足を引っ張ることに汲々とするだけの連中」
「そして、彼らにとっては、それが京都人の大切な事、その人生において貫かなければならない最重要課題か」

麗は、母と蘭が、結局は京都に戻るしかないと思っている。

「どうせ、折檻される俺を遠巻きに見ているしかしない二人だ」
「俺に、田舎に住めないと泣きついて来たところで、あの二人とは一緒に住みたくない」
「なんで、そんな薄情な二人と、一緒に住まなくてはならないのか」
「それに、あんな田舎者二人が、都内に住めるわけがない」
「少しでも土地勘がある京都しかない」
「母はともかく、甘ったれの蘭は、苛められるだろうな」
「新参者で、特にド田舎からの転校生になれば、京都では、どんな苛めをされるか、わからない」

「蘭は、少々、可哀想な気がするが・・・」
小さな頃の、涙がベチャベチャになった蘭の顔を突然、思い出した。

「ほんと、無様な泣き顔だった」
「ブランコから落ちて、俺に泣きついて・・・あれは京都の公園か」
「俺も間違っても、恵理さんと結には見せたくなかったから」
「抱きしめたら、また泣いて」
「鼻水まで、ベチャベチャにつけられた」
「その顔を、蘭は京都に転校して、またするのだろうか」
「あの顔は、見たくないなあ」

麗は、そう思った時点で、蘭からの着信拒否を解除した。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み