第415話麗と葉子の恵比寿デート

文字数 1,237文字

翌金曜日の夕方、麗と葉子はタクシーにて、恵比寿のシャトーレストランに到着。
事前に予約してあった優雅な個室に案内される。

支配人らしき立派な人が挨拶に来た。
「九条麗様と葉子様、今後ともおひいきに」
「大旦那様にも、何度もお越しいただいております」
「今宵は、私たちの料理を心行くまでお楽しみください」

麗は、会釈。
「丁寧なご挨拶、ありがとうございます」といつものシンプル。
ただ、その表情は崩さない。

麗は、何となく事情を察した。
「俺の口から、この店が出た直後、京都の九条家も通じて予約を取ってしまった」
「そうでなければ、こんな個室までは簡単に予約はできない」
ただ、出過ぎたこととか、不快感はない。
むしろ、葉子の手回しの良さに、感心している。

支配人は笑顔。
「私も、京都のお屋敷には何度も」
「そのたびに、極上の日本料理をもてなされまして」
「最近も、二週間前ほどにお邪魔して、大旦那様とご一緒に」
「その際に、麗様の名前も出ましたので、本当にうれしく思います」

麗は、表情を少し崩した。
「ありがとうございます」
「ただ、まだ大学一年生、ワインも飲めない年なので」

支配人は、また笑顔。
「はい、心得ております」
「麗様が二十歳を超える時まで、私も待ちます」
「そうしたら、この恵比寿でも京都でも、お酒を酌み交わしましょう」

麗も、それには自然な笑顔。
その麗の笑顔を受けて、支配人はきれいなお辞儀、個室から一旦、姿を消した。

麗は軽くため息。
「思いがけないことがあるもので」
葉子
「いずれはわかることで、この形のほうが自然かと」

料理が、運ばれて来た。
「白トリュフとコンテチーズのクリームソースをゴンドラの形に焼き上げた生地に、スライスした白トリュフをかけたもの」
「ソローニュ産のキャビアに、甲殻類のジュレに滑らかなカリフラワーのクリーム」
・・・その他、ホタテ貝やオマール海老、アワビなどの海鮮系の見事な料理が続く。
メインには、北海道産牛フィレ肉をフォアグラと抱き合わせローストしたもの。

麗は懸命に食べる。
「いずれにせよ、素材といい、ソースといい、完璧で」
葉子も同じようなもの。
「本当に計算しつくされた料理で、海鮮系の素材でも日本人に違和感が無く」

デザートの時点で、再び支配人が顔を出した。
「麗様、葉子様、ご満足はいただけたでしょうか」

麗は、笑顔で答える。
「はい、どれも味の芸術品のようで、素晴らしく美味しく」
「また、京都に出向かれたら、お立ち寄りください」

さて、美味極まるディナーも終わり、麗と葉子は恵比寿の高層ビルの展望スペースに移動。

麗が、美しい夜景に見とれていると、葉子が身体を寄せる。
「麗様、カップルさんばかりで」
そのまま葉子を抱き寄せると、葉子は涙声。
「もう・・・幸せで・・・」
「うちは・・・元々、奈良の田舎のほうで・・・こんなキラキラした大都会なんて・・・」
「別世界やと・・・憧れだけやと・・・」
「麗様のおかげです、ほんま・・・」

二人とも、何のためらいもなかった。
麗と葉子の唇は、そのまま重なっている。
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