第413話麻友からの相談 麗は葵の決意を強く感じるけれど

文字数 1,355文字

麗と葵が午前中の講義が終わり、昼食場所を考えていると、麗のスマホに不動産の麻友からのコール。
「麗様、本当にお忙しいとは思いますが、お時間をいただきたいのです」

麗は、すぐに恵理と結の住んでいた家を取り壊した後の計画と察した。
「はい、申し訳ない、いろいろと立て込んでおりまして」
麻友
「秘書の葉子さんにお聞きしましたら、明後日の土日は、鈴村様のお宅とのこと」
「それから、日曜日の夜も、立候補予定者との面談とか」
「そうなりますと・・・いつ頃に?」

麻友らしく、テキパキと話して来るので、麗は応ずるしかない。
「次の土曜日あたりで、どうでしょうか」
「その頃には、更地になっているかと」
麻友は、反応が速い。
「わかりました、宿泊研修施設との意向を大旦那様からも伺っております」
「数種類、モデルプランを考えておきます」
麗は、シンプルに「期待しています」と、通話を打ち切る。

麗の横で話を聞き取っていた葵。
「ほんま、休む暇もなく」
麗は、苦笑。
「時間が足りなくて、目が回りそう」

葵は麗の腕を組む。
「そうなると、スタミナ系のお食事でしょうか」

「と言うよりは、あまり混んでいなくて落ち着ける店、行列もないところがいいけれど」
葵は、身体を少し密着させる。
「麗様、次の授業は、3時からです」
「少し歩いて、空いている場所を探しましょう」

麗も、反対する理由はない。
校門を出て、落ち着ける店を探す。


「世田谷の住宅街に入れば、プチレストランがあるかもです」
麗は「はい、そう思うけれど」と曖昧な返事。
とにかく、葵の身体押し付けが強めなので、困惑している。

葵は、麗の困惑顔が面白いらしい。
「麗様、うちも最近、ボリュームアップしました」
麗は、必死に切り返す。
「育ち盛りとか?」
葵は、プッと笑う。
「いや、食べ過ぎかと、蘭ちゃんと美幸さんと」
「つい、夜に女子会になって」
麗は、また苦笑。
「蘭は・・・食べることは立派で・・・肉ばかりつけて」
「それにつられてどうするんです?」
「おまけに美幸さんまで」

「そやかて、蘭ちゃんが食べている姿を見ると、マジに美味しそうなんです」
「もうね、食べるものが、口にポンポン放り込まれて」

麗は眉をひそめる。
「蘭があれ以上、ふくらんだらバレーボールに」

「いや、蘭ちゃんは、それが魅力で」
麗は返事に困る。
「この間、ダイエットに取り組むって、誓ったのになあ」

そんな話をしながら歩いていると、落ち着ける店を、何とか発見、そのまま入る。

麗はメニューを見る。
「和洋中、何でもありか・・・それでいて、上品で静かな感じ」

「実に迷います、お魚も美味しそうで、このミニステーキも捨てがたい」
麗は決断が速い。
「たまには、ビーフストロガノフにするかな」
葵は驚いた顔。
「あら、見落としていました、こってり系ですね、麗様」
「うちは・・・ローストビーフのランチに」

「取り分けて?」
葵は「はい!」と満面の笑み。

麗は、その笑みを見て思った。
「葵とこうしていて、違和感がほとんどなくなっている」
「慣れ親しんだ京都を出て、批判も恐れず、俺を追いかけて来た葵」
「その気持ちは、絶対に軽視できない」
「いずれにしても、もう少し、時間が必要かも」
「京都に戻れば、なかなか忙しい」
「嫁候補から特定など、とても考える暇はない」

こうして、麗の内面は、結局落ち着くことはない。
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