第416話京都の重圧から、お世話係たちの解放を考える

文字数 1,257文字

翌土曜日、麗と葉子が品川で新幹線に乗り込むと、その前には葵と花園美幸が定例で座る。
麗は、身体の芯が疲れているので、品川発車後、ものの3分で眠りにつく。


「葉子さんだからでしょうか、眠りにつかれるのがあっと言う間で」
葉子
「最近、どうもふっくらとしたからでしょうか」
「寄りかかりやすいのかも」
花園美幸
「ああ・・・うちも・・・ふっくらとしました」

「ほんま、最近、食べ物が美味しくて、困ります」
葉子
「私たちも、まだ育ち盛りなのでしょうか」
花園美幸
「いや、単に京都から離れて、のん気で食べ過ぎかと」

その麗は、三島を過ぎたところで目を開けた。
「たまには富士山を」とつぶやいて、窓の外に目を向ける。

葉子も富士山を見る。
「静岡もいい所ですよね」
「温暖で富士山もあって、温泉、お茶、みかん、駿河湾」

「皆さんで計画しましょうか?」
「九条財団旅行部で計画を」
花園美幸
「そやねえ、石仏が終わったらご苦労さん会で?」
「どうです?麗様」

麗はいきなり話を振られて驚くけれど、
「そうですね、お魚も美味しいし」
「伊豆にも美味しいものがあって・・・高足カニかな」と返す。

しかし、全員が高足カニを知らない様子で、キョトン顔。
麗は仕方なく説明をする。
「駿河湾を代表する、世界最大の甲殻類と言われていて」
「大きいものだと3m以上あって、水深200m~300m位の深海に生息」
「それで、その生態はほとんど未解明です」
「漁獲方法としては、トロール船を使った底引き網漁か、籠を仕掛けて待つかご漁」
「ズワイガニやタラバガニと同じ、もしくはそれ以上に大変美味しいカニ」
「水から上げて放っておくと、どんどん身が溶けて水になってしまう」
「ボイルする場合、一つ間違えると身が溶けてなくなってしまうので、美味しく調理するには熟練が必要」
「蒸し焼きが美味しい、カニみそが濃厚、脚を焼いて食べると、旨みが凝縮されて美味しい、刺身にすると、さっぱりとしていてクセがない」
「旨みと天然の塩味がミックスされる天ぷらも美味しいかな」

麗にしては珍しく長い説明、しかし全員が熱心に聴いていたけれど、反応も早い。


「麗様、秋に高足カニツアーです、決定です」
花園美幸
「おなか減りました、麗様の責任です」
葉子
「ダイエットは諦めました」

麗は、そんな反応を驚きながら、いろいろと思う。
「みんな、京都にいる時と言うことも表情も違う」
「やはり、京都の呪縛から解き放された安心感か」
「それほどまでに、重圧もある」
「俺も京都に戻るまでは、重々感じていたけれど」
「その後は、目まぐるし過ぎて、感じる暇もなかった」

そこまで考えて、麗はお世話係たちを思った。
「定期的に、一週間から二週間、それぞれの分野で都内研修とか取材とか」
「カリキュラムも検討して」
「宿泊は・・・高輪でもいいかな、お世話係の万一の体調不良の補助として」
「いずれにせよ、お世話係が一回りしてから」
「まだまだ、検討すべきことはあるけれど」
「・・・万が一、お世話係同士で、下手な嫉妬が生まれてもなあ」

そんなことで、麗はなかなか考えがまとまらない。
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