第73話お風呂で姉妹に迫られる麗 伊勢物語冒頭を思い出す

文字数 782文字

麗は、本当に目のやり場にも、身体の動かし方にも困った。
何しろ、あっという間に、佐保の身体は麗に密着してしまった。

「すごく、柔らかくて、気持ちがいいけれど」
「そうは言ってはいられない」
「若い男と女が、裸で風呂で、密着・・・」
「危険極まりない」

麗は、必死に冷静になろうと思った。
「佐保さん、どうしたんですか?」
「麻央さんが見たら、困ると思うのですが」
当たり前のことを言って、この状況から脱出するしかないけれど、佐保は身体の密着をやめない。

佐保
「そんな心配いらない」
麗は聞き返す。
「意味がわかりません」

佐保は、麗の太ももを、なでた。
麗がビクッとなるのを笑い、もう一言。
「麻央も少ししたら入って来るから」

麗は、頭が混乱した。
返す言葉もない。
その麗の太ももを佐保は、なで続ける。
「麗君・・・細すぎ・・・」
「肉が足りないのかな」


スルッと浴室の扉が開く音がした。
麗は、また目を閉じた。
麻央が、タオルも巻かずに、そのまま浴室に入って来た。

麻央が佐保に声をかけた。
「佐保、あまりいじめないの」
「麗君、顔が真っ赤だよ」
「のぼせて倒れられると、困る」

佐保は
「だって、麗君、可愛いもの」
「そもそも、最初に連れ込んで、抱きついたのは麻央でしょ?」

麻央は苦笑い。
「まあ、それもそうだけど」
そのまま、湯舟に入って来る。

麻央は麗の胸をなでた。
「それにしても、肉がないよね」
「どういう食生活をしたら、こうなるのかなあ」

佐保
「ほんと、いろんなことが出来て、知っているのに、健康面に問題あり」
「食生活の改善の必要があるね」

麗は、必死に耐えるのみ。

そんな必死の麗が面白いのか、麻央が麗に質問。
「この状況を歌に例えると?」

麗に頭に浮かんだのは、ただ一首だけ。
「春日野の 若紫の すりごろも しのぶの乱れ 限り知られず」
伊勢物語の冒頭だった。

佐保の手の動きが、ようやく止まった。
麻央は、その目を潤ませている。
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