第303話美幸の報告と大旦那、晃。奈々子と蘭

文字数 1,086文字

奈々子が麗からの何かの言葉により回復した話は、花園美幸から大旦那に連絡がなされた。

美幸
「奈々子さんが本当にお手上げで、家政婦どころか、施設に預けようと思っていたのですが」
「思いがけなく麗様がお見えになりまして、一言二言か・・・お言葉をおかけになられたのでしょう、奈々子さんの表情がすっかり変わりまして」

大旦那は、その話に驚き、胸をなでおろす。
「ああ、それは・・・予想外や」
「麗が何を言ったかわからん、ひとまずは安心やな」

美幸
「はい、それでも一応は経過を見ようかと」

大旦那
「ああ、それがいい、奈々子が困るたびに麗を呼ぶようではあかん」
「当分、奈々子と蘭の面倒は継続や」
「それも忙しくなる麗の苦労を減らすことになる」

また、その話は、大旦那から、香料店の晃にも伝えられた。
大旦那
「麗が何とかしたみたいや、一安心や」
晃の声が湿る。
「ほんま、情けない妹で、麗様に迷惑かけ通しで」
「ありがたくて、もう、麗様は仏様です」
大旦那の声が沈んだ。
「麗は、心が深いし、強い」
「わしも、言い過ぎたかもしれんが、それを上手に」
晃は焦った。
「いえ、全て奈々子があかんのです、大旦那様としてはお叱りになるのが当たり前です」
大旦那の声が震えた。
「わしらも、麗に苦労をかけた元凶や、しなくてもいい苦労をな」
「でも、麗は、その苦労で、強い」


さて、香苗と桃香は、しばらくして吉祥寺に帰った。
ようやく二人きりになったので、蘭は奈々子に尋ねた。
「ねえ、母さん、麗ちゃんは何て言ったの?」

奈々子は、蘭を抱きしめた。
「それは、まだ言わんよ」
「麗様との約束や」

蘭は、それでは気になる。
「少しだけでも・・・だめ?」

奈々子は、笑顔。
「とにかく、見捨てられてはおらんということ」
「面倒は見てくれる」
「だから・・・」

蘭は、奈々子の笑顔がうれしい。
「だからって?」
つい笑顔で聞き返す。

奈々子は、蘭の背中をポンと叩く。
「安心して、シャンとして暮らせばいいだけや」
「前を見て、恥ずかしくないように」

蘭は、胸がドキドキする。
「麗ちゃんと暮らせるのかな・・・またいつか」

奈々子は、笑顔のまま。
「いずれは、九条の何らかの関係に、引き取るとか」
「このアパートは、そもそも九条のものやけど」
「うちの仕事もそうなる」
「蘭の仕事は・・・蘭の希望次第と」

蘭は、顔が真っ赤になった。
「そんなの、当たり前だよ、九条から抜けたくないもの」
奈々子は、また笑う。
「麗様は、厳しいよ、仕事には」
「だから、蘭もしっかり勉強しないと、叱られるよ」

「それはそうだ・・・美里ちゃんも、やりこめられたって」
「でも、当たり前だよね、九条に入るとなれば」
蘭は素直に頷いている。
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