第206話直美の辛さ 麗の戸惑い 蘭と奈々子は新しい生活に向かう

文字数 1,188文字

直美は麗が部屋の照明を消した時点で、そっと同じベッドにもぐりこむ。
そのまま手を伸ばすと、麗も気がつき、手を握る。
言葉はなかった。

全てが終わり、直美は恥ずかしい。
「申し訳ありません、無理やりでした」

麗は、いつもの能面よりは、少し和らいでいる。
「いえ、大丈夫です」
しかし、呼吸が少し荒い。

直美は、その麗の姿も、また艶めかしい。
ますます、離したくないし、離れたくないと思う。
「身体も心も我慢できそうもない」
しかし、お世話係は一週間交代。
直美は、京都に帰るまでの、あと三日くらい。
しかし、それが終われば、六週間は我慢となる。

「はぁ・・・辛い・・・」
「でも、待っとる子もおるし・・・」
「変ないさかいを起こして、追い出されたら、もっと辛い」

しかし、直美は、いつまでも余韻に浸っているわけにはいかない。
気持を切り替えて、朝食の準備と弁当の準備に取り掛かる。

麗も、直美が仕事を始めたので、着替えを始める。
「ああは言ったけれど、頭がクラクラする」
「俺が抱くというより、逆かなあ」
「身体が直美に吸い込まれるような」
「いいのかな、そんなで」
「俺が、求めるべきなのかな」
ただ、麗には、どうしていいのか、まだわかっていない。
成り行き任せの状態になっている。

蘭は、引っ越しを間近にして、放課後に教員室に出向いた。
それは、今日限りで、今通う高校には来ないこと。
明日以降は、引っ越し準備に専念したいとの意思を伝えるため。


「本当に申し訳ありません、なるべく騒がれたくないので」
担任教師
「うーん・・・本来は・・・しっかりと挨拶をして、最後まで授業を受けてになるけれど」
「蘭さんは、人気もあるし、突然いなくなると、それも騒ぐよ」

「転居先に万が一、押しかけられても、困るんです」
「仲良くしてくれたみんなには悪いけれど、引っ越しして都内の高校に通ったら、お手紙します」
担任教師
「それぞれに都合もあるので・・・」
「すでに転入先の高校からも、しっかりとした連絡もいただいております」
「本当に有名校で・・・素晴らしいですね」
「なかなか、簡単には転入できないと思うのですが、おめでとうございます」

これで蘭と、今まで通った高校との縁が切れた。
蘭は、結局、クラスメイトに挨拶をせず、そのまま帰宅した。

奈々子は、京都の香料店の兄から、連絡を受けた。
「奈々子、アパートに引きこもっておっても、つまらんやろ」
奈々子
「はぁ・・・それは飽きる」

「日本橋にな、関係の深い呉服屋がある」
「そこに挨拶をしてくれんか」
奈々子
「挨拶・・・だけ?」

「ああ、気に入られれば、そこで香料の指導や、先方も望んどる」
「ほぼ、常勤や」
奈々子は驚いた。
「兄さん・・・仕事まで見つけてくれたん?うれしいわぁ・・・」
晃はやさしい声。
「可愛い妹や、世話するのが当たり前や」
「それに暗い顔して、麗様を見れんやろ」
奈々子は、うれしいような、複雑な気持ちになっている。
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