第453話麗の深い考え 可奈子と浅草歩きの計画

文字数 1,062文字

麗と葵は、コンサートの第一部だけを聴き、会場を出て、タクシーに乗る。


「本当は最後まで聴いてあげたいけれど」
「私たちが残っていると、彼らも気を使うだろうから」
「私たちが2人とも未成年ということもある」

葵は、残念と思うけれど、麗の考えも深いと思う。
「楽屋に出向いて花束を渡し、お祝儀も」
「途中で帰ることを詫びながら、京都九条家にも招待」
「彼らは、お祝儀で二次会も出来るだろうし、自由に安心して演奏ができる」
「安全第一を考えてタクシーで帰るのも正解」

その後は葵を久我山のアパートまで送り、麗はそのまま高輪の家に帰り、可奈子の出迎えを受ける。
可奈子からの報告があった。
「お疲れ様でした、今日の演奏者2人から、お礼の電話をいただいております」
「それから料亭の香苗様からもお礼の電話が」

麗は軽く頷き、ゆっくりと珈琲を飲む。
「いろんな人に逢ったので、少し疲れたかな」と、珍しく本音。

可奈子は、麗が少し心配。
「いろいろと、気配りをされて」
「麗様、無理は禁物です」
「この調子で動き続けたら心配です」
「京の夏はほんまに暑いのですから」

麗は、軽く笑うだけ、話題を変える。
「お世話係さんと、金曜日の夜に外食する習慣があって」
「可奈子さんは、希望はあります?」

可奈子は、少し考え、恥ずかしそうな顔。
「あの・・・浅草に・・・行きたいなあと」
「それと寄席に・・・」

麗は、面白そうな顔。
「寄席・・・楽しそう」
「演芸ホールかな、テレビには出ないけれど、味のある芸達者な名人が入れ代わり立ち代わり出て来る」
「手品、曲芸、漫談、漫才、講談、落語、物真似」
「関西とは、また違う芸風かな」

可奈子の目が輝く。
「どうせなら、思い切り関東の、江戸の笑いを楽しみたいなと」
「浅草寺さんにもお参りして」


金曜日の予定が簡単に決まり、麗は可奈子と風呂に入る。
可奈子は含み笑い。
「見慣れました?麗様」

麗は、答えが難しい。
「それでも、最初の頃よりは」と、控え目に返す。
可奈子は麗に身体を寄せる。
「そうですねえ、全然目を開けられませんでした」
「逆に、麗様が見られ放題で」
麗は、また本音。
「本当に恥ずかしかった」
可奈子はクスクス笑う。
「多勢に無勢で?」
麗は、答えに難儀する。
「みんなきれいな人ばかりで、目の保養・・・いや・・・うーん・・・」
結局、まともな答えになっていない。

可奈子は、ますます麗に密着。
「みな、モデルさんみたいですもの。」
「うちは・・・平凡です」
麗は、可奈子の腰に手を回す。
「可奈子さんも、見とれます」
「均整の取れた美しさで」

可奈子は、この時点で我慢の限界を迎えている。
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