第378話九条屋敷に戻る 麗と葉子

文字数 1,200文字

京都駅に到着した麗と涼香は、それぞれの実家に戻る花園美幸と葵と一旦別れ、三条執事長の運転する黒ベンツで九条屋敷に戻った。
麗は、定例のお世話係と使用人全員の大歓待の中、大旦那、五月、茜の待つリビングに入る。

「ただいま、戻りました」
大旦那は、本当にうれしそうな顔。
「ああ、お疲れさん、安心したわ」
五月は目を細める。
「顔色もようなって、ますますハンサムや」
茜は、麗の手を引き、ソファに座らせる。
「さあさあ、葉子さんがお待ちかねや」
その言葉の通り、麗がソファに座ると、葉子が少し顔を赤らめ、全員にお茶を出す。

五月
「今後一週間のお世話係の葉子さんや」
「それと麗ちゃんの第一個人秘書に」

葉子は、ますます緊張気味。
「大役ですが、よろしゅうに」
麗は、顔をやわらげる。
しかし、「ご心配はいりません、力をあわせて」と、やや地味目の返事。

これには大旦那が苦笑。
「もう少し、華のある返事が欲しいな」
五月も、笑う。
「麗ちゃんは、何にでも慎重や」
茜は麗を弁護する。
「お世話係さんは、それが安心できるとか、魅力やとかで」

続いて三条執事長が、本日の予定を説明する。
「午後一時過ぎに、鈴村八重子様がお見えになります」
「ご対応は、まず麗様、そして大旦那様、五月様」
「それから、夜七時に銀行の直美様がお見えです」
「直美様には、麗様がご対応となっております」

リビングでの挨拶と予定確認が終わり、麗と葉子は、ようやく麗の部屋に入った。
麗が葉子の顔を見ると、実に幸せそうな顔。
元々、童顔なので、年上とは思えないほど可愛らしい。

その葉子が麗の前に立った。
「あの、お願いが」

麗は、葉子の赤い顔で、お願いを察した。
そのまま、腕を回し、葉子を抱きしめる。
葉子の身体の力が途端に抜けるので、しっかりと抱く。
「はぁ・・・麗様・・・これを、ずっと待っとりました」
「ほんま、安心しました」
「でも、はぁ・・・麗様のお体、気持ちが良くて」

麗は、葉子に謝った。
「最初の晩は・・・ごめんなさい」
「よくわからなくて」

葉子は、麗の肩にその顔を乗せる。
「いや、謝らんと、あの時は驚きましたけれど、安心できるお人やとも」
麗は、まだ慎重。
「いろいろと、お願いすることが多くて」
葉子も麗の身体を抱く。
「もう、面白くて、張りが出ます」
「もっともっと、言いつけて欲しいなあと」

麗と葉子は、互いに目と目で会話。
自然に身体を離す。

葉子は麗に確認。
「鈴村さんとの面会、お着替えはなされます?」

麗は、少し考える。
「祖母」ではあるけれど、鈴村八重子はキチンとした服装で九条家に来ると思う。
しかし、麗自身は九条家後継であるけれど、大学生でもある。
「そうですね、紺のブレザーに・・・ニットタイぐらいで」

葉子は、ふんふん、と頷く。
「昔懐かしいアイビールックみたいですね」
「鈴村さんの時代の人には、特に好感が持てそうです」

麗は、驚いた。
葉子の言ったことは、麗が考えていたこと、そのものだったのだから。
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