第179話平野神社参拝 五月とお世話係の相談

文字数 1,478文字

櫟谷(いちいだに)七野神社の参拝を終えた麗と茜は、市中を少し走り、平野神社に入った。

茜が少し説明。
「平野神社は、元々は平城宮の宮中に祀られていて、この地には平安遷都と同時にご遷座」
「ご祭神は四座、今木皇大神は源気新生、活力生成の神、久度大神は竈の神、生活安泰の神」
「古開大神は邪気を振り開く平安の神、比賣大神は生産力の神」
「最初は今の京都御所とほぼ同じ大きさだったみたい」
「元々は庶民の入れる神社ではなく、皇族に関係が深い神社」

麗も詳しい。
「皇族から臣籍降下した源氏・平氏、高階・大江・中原・清原・秋篠の天皇外戚の氏神」
「この神社が宮中の外に祀られたのは、この臣籍降下と深く関わっているとか」
「光源氏は臣籍降下した一族の繁栄を願った平野大神の顕現であるとの説もある」
「春日社、住吉社、蛭子社、八幡社の末社があって、参道には出世導引稲荷社、猿田彦社」

茜は麗に尋ねた。
「どうしてここに来たかったの?」
麗は少し考えた。
「人が少ないほうが、いいかなと」
「それでいて由緒は深い」
「子供の頃、大旦那と3月の春日社の例祭とか10月の紫式部祭りにも来たことがある」

そこまで答えた麗は、参拝を七野神社とは比較にならないほど、あっさりと終えた。
そして、そのまま黒ベンツに乗り込む。
茜は、少し面白くない。
「なあ、麗ちゃん、もう帰るん?」
麗が簡単に頷くので、茜は迫った。
「もう少しデートしよ、甘い物でも」
麗は、面倒そうな顔。
「最近、食べ過ぎで、これ以上は」
「それに、どこの店も混んでいるのでは?」
しかし、茜は引かない。
「麗ちゃんは食べ過ぎくらいが丁度いい」
「うち、餡蜜食べとうなった、知り合いの店がある」
麗は、また拒絶しても、茜は引かないと思った。
「うん、いいよ、姉さん、たまには」
結局、麗はほとんど食べたことのない「間食」をすることになった。

さて、麗と茜が京都街歩きをしている間、九条屋敷では五月とお世話係が、順番の相談をしている。

五月
「気難しいところがある麗様やけど、妙案を出してくれた」
「実は一人で気楽にというのが、本音やと思うけど、九条家としては、そうはいかん」

お世話係からも、いろいろな発言がある。

「その通りやと思います、麗様は今後の九条家を代表する大切なお方」
「だから、私たちは運命共同体」
「とにかく、まずはお身体に肉をつけないと」
「東京の夏も暑いけど、京の夏もひどいから、あの痩せ方では持たん」
「まずは、食欲増進と言えば、お料理系から?」
「ああ、そうやねえ、何料理が好きなんやろ」
「茜様が聞き出したのは、チーズリゾットとかフォンデュや」
「洋食系や、そうなると直美さん?」
「うーん・・・でも、うちも失敗するとって・・・不安もあるけど」
「知り合いに聞いたら、水も野菜も、京都とか関西とは比較にならんて」
「素材の滋味が、やはり、京都のほうが深い」

茜はお世話係全員の顔を見る。
「一週間交代や、その中で、いろいろ作って麗様が美味しそうに食べたものを、しっかりメモして、心配ばかりだと話が前に進まん」
「それを次の人に漏れなく引き継ぐ」
「その積み重ねや、それが麗様の代の九条家にも役に立つ」

お世話係たちも納得、五月に頭を下げる。
「ほんまや、その通りや」
「五月さんになってから、話がスムーズや」
「恵理様と結様が、いなくなってよかった」
「五月様なら、言いたいこと言えるし、聞いてもくれるし」

そんなお世話係たちに、五月は笑顔。
「当たり前や、うちだって、お世話係出身や」
「だから、みんなの気持は、ようわかるし、最後までみんなの面倒を見るよ」

五月とお世話係たちの話は、なごやかに続いている。
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