第405話麗にボディーガードの話 麗は何かが吹っ切れ始める

文字数 1,130文字

時代和菓子試食会も大成功に終わり、職人たちは笑顔で帰っていった。
玄関で見送った麗に茜。
「いや、盛り上がった、次につながるよ、麗ちゃん」
麗は、いつもの能面に戻る。
「どうなることかと思ったけれど、無事に」と、出て来る言葉も慎重。

リビングに戻ると大旦那も相好を崩している。
「麗、ようやった、ますます京の街が元気になる」
五月もうれしくて仕方がない。
「麗ちゃんが職人の輪に入っていった時は、感激した」
「麗ちゃんも職人も楽しそうで」

茜は、少し感じた不安を言う。
「おそらく、評判がますます広がって、人気が出ます」
「京の街を歩く際は、ボディガードが必要になるかなと」

大旦那も、すぐに同意。
「そやなあ、選んでおかんと、万が一もあるしな」
「運転手を兼ねて、ボディーガードか」

ただ、麗自身は面倒。
ボディーガードが決まった時点で、麗の京都一人歩きは不可能となるのだから。

そんな話し合いを終えて、お世話係たちと風呂に入る。

「麗様、ほんま、お疲れ様でした」
「時代和菓子もお菓子も面白うて、目が開きました」
「また、次回も期待します」
「それにしても、麗様の笑顔、身体震えました」
「そやなあ、まあ、可愛らしい、輝いて」
「あの笑顔に惚れん人はおらん」
「職人たちにも、大人気や」
「心をわかってくれる人がようやくと、それも九条の後継様と」

様々、賑やかな声がかけられるけれど、最初は麗は頷いているだけ。
さすがに用事の連続、政治家相手に緊張感のあるやり取りをした疲れもある。
それでも、葉子以外のお世話係との入浴は今日までなので、懸命に話に応じる。
「本当に皆さんもお疲れ様」
「思いつきの試食会でしたけれど、参加してくれて場を盛り上げてくれてありがとう」

麗の感謝に、お世話係たちは、また感激の様子。
「そんな、うちらも参加できてうれしゅうて」
「次は作り手で参加したいなあとか」
「九条家オリジナルを作りたいとか」
「あちこちアレンジも面白いとかで」

風呂も終わり、麗は葉子と自分の部屋に戻った。
葉子
「麗様、明日の東京への準備は、全て終わっとります」
「ですから、お休みになるだけです」

その葉子には、麗も安心。
「助かります、少し眠くて」

葉子は、麗の後ろに回り、肩を揉む。
「ほんま、凝り過ぎです」
「お疲れにも、程があります」
「ベッドにうつ伏せに」

麗は、肩を揉まれ出した時点で、眠気が出た。
素直にベッドにうつ伏せになると、葉子のマッサージがはじまった。


何時、眠ってしまったのか、わからない。
それでも、カーテンの間から漏れて来る光で、麗は目を開ける。
服もいつの間にか夜着にされ、葉子と抱き合っている。

葉子も、すぐに目を開けた。
「麗様、いただきたく」

麗は、何も抵抗感がない、何かが吹っ切れたような思いで、葉子の求めに応じている。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み