第399話麗の不安と対応 意外な評価

文字数 1,169文字

夕食は料亭での不快を消し去るほどの見事な料理が並ぶ。
「生湯葉刺身」「生麩と茄子の揚げ出し」「海老と蓮根の湯葉包み揚げ」「トロトロ湯葉の餡掛けご飯」「フォアグラの西京焼」等で、小食の麗でも食が進む。

五月
「この後、和菓子職人が集まりまして、時代和菓子の試作品評会」
「そうは言っても、箸が止まりません」

「このお屋敷の料理人のレベルが高い、当たり前やけど」
「政治家の接待専門とは、格が違う」
大旦那
「まあ、領収書のゴマカシばかりやろな、情けない」

麗は、黙々と食べる。
大旦那の言った「政治家の全員選び直し」「関係筋から」が、気になっている。
それをさせたくない現職から、おそらく哀願があるだろうし、関係筋にしても「誰をどこに」で、面倒な選定作業になるのは今から見えている。
しかし、そんな面倒はともかく、目の前で見た政治家連中に、何の魅力も感じなかったことは事実。
話を深くしていないこともあるけれど、魅力を感じない人を後援するのも、馬鹿馬鹿しいと麗は考えている。

そんな麗に大旦那が声をかけた。
「次の選挙では、竹田は後援しない」
「何人か選んどくから、麗も話を聞かんとな」
「ああ、来週は鈴村さんの家か、とすれば、来週の日曜の夜や」

少し驚く麗に五月。
「ほんま忙しいけど、選挙は準備に時間が必要」
「頼むわ、麗ちゃん、それも仕事や」

仕事と言われれば、断るわけにはいかない。
「それでは、資料などをいただいて」と引き受ける。

茜は、少し心配そうな顔。
「なあ、麗ちゃん、よくわからんかったら協力する」
「悩まんと、忙しいから心配や」
麗は、ただ頷くだけ、何とも言いようがない。

そんな夕食が終わり、麗は一旦、自分の部屋に戻る。
少し遅れて、葉子が入って来た。
葉子も麗が心配。
「大変、お疲れ様でした」

麗は、ため息が出るのを止められない。
「まあ、仕方ないと言えば、そうなるので」
逆に、葉子も大変になるかと思う。
「葉子さん、政治家とか秘書とか、泣きついて来るかもしれません」
「葉子さんを通じる場合があって、葉子さんの負担になるのではと」

葉子は、首を横に振る。
「それは心配いりません」
「東京の麗様への泣きつきは厳禁」
「大旦那様の御意向です」
「それを破った時点で、後援もないと」
「今、三条執事長様が一斉メールしておりました」

麗は、ようやく落ち着いた。
「どうなることやらと」

しかし、そんな落ち着きも、続かない。
ドアがノックされ、茜が入って来た。
「麗ちゃん、大変やけど」
「和菓子職人さんが、もう来られてな」
「麗ちゃんの顔を見たいと」

麗は、やむなく立ちあがる。

茜は、笑顔。
「大評判や、麗ちゃん」

麗は意味不明でいると、茜がまた笑う。
「どこから話が伝わったんかな」
「浜村秘書を、叩き潰したって、大喝采や」
「まあ、彼は、相当嫌われとったから、胸がスッとしたとかで」

茜の隣で、葉子もクスクス笑っている。
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