第68話麗は佐保の腕をかわすけれど・・・

文字数 1,093文字

麗は懸命に佐保の腕から身をかわす方法を考える。

「いくら何でも、姉妹に抱かれるのは、よろしくない」
「それに佐保さんは、今日初めて会った人」
「外人がやるハグとは違う、単なる挨拶ではない」

麗は、佐保に声をかけた。
「あの・・・佐保さん、そういうのは、出来れば二人きりの時のほうが」
一時的にも、これなら、佐保の顔をつぶさないと思った。

佐保は、麗の言葉通りに、腕を伸ばすのを止めた。
「そうね、そのほうが、もっとたっぷりだよね」
「麻央に邪魔されても困るし」

佐保自身が麻央の邪魔をしたと思うけれど、麗は佐保の抱きつき行為さえ止められれば文句はない。
そもそも、麗自身が、麻央や佐保に抱きつく意思など、何も無い。

少し落ち着きを取り戻した佐保は、「お鍋出来たから」とのこと。
落ち込みを見せていた麻央も、立ち上がる。

食堂に入ると、確かに湯気が立つような鍋料理が、ドンとテーブルの中央にある。
佐保
「チーズフォンデュにしたよ」

麗は、また頭を下げる。
「ありがとうございます、大したお手伝いもしていないのに、御馳走ばかりをいただきまして、恥ずかしいほどです」

麻央は、キビキビとした口調が戻ってきた。
「そんなことはない、とにかく食べて、肉をつけなさい、麗君」
「ほんと、ガリガリだった」

チーズフォンデュの具も様々。
フランスパンは当然として、野菜類ではブロッコリー、パプリカ、プチトマト、アスパラ、
ジャガイモ、マッシュルーム。
肉類では、ウィンナー、鶏肉。
魚介系でエビとホタテ。
その他はウズラの卵。

鍋料理の他には、赤ワインが2本置いてある。

佐保が、乾杯をしたいようだ。
「麗君のグラスには、アルコールを飛ばした赤ワイン」
と、麗が持つグラスに注ぎ入れる。

麗が、普通の赤ワインを佐保と麻央に注ぎ入れ、食事が始まった。

佐保
「どう?お口に合う?」
麗は、素直に美味しいと思った。
「はい、美味しくて力がつくような感じがします」
麻央は、まだ微妙な顔。
「ごめんね、さっきは、つい襲いたくなって」
麗は、首を横に振る。
「いえ、男女なので、そういうことになる場合もあるのかなあと」
「理屈では、すまない時も」
麻央は、ようやく顔をやわらげる。
「ありがとう、はしたないと思っていて」

佐保は意味深な笑み。
「さすが源氏に詳しい麗君、男女の道も詳しいのかな」
麗が答えに困ると、佐保。
「さっきも、軽くあしらわれて・・・私のほうがお姉さんなのにね」

麻央は、麗をじっと見る。
「うん、上手だった、あれ以外にはないかなあと思ったもの」

佐保は、また意味深な笑み。
「ねえ、麗君、二人きりだったら、どうなったんだろうね」

麗は、答えに困り、フォンデュ鍋に手が伸ばせなくなっている。
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