第72話京都人の差別意識 麗の入る湯舟に佐保が

文字数 1,275文字

麻央は、麗が拒まなかったことに安心、さらに話を続ける。
「日向先生はね、麗君の才能をすごく惜しんでいるの」
「三井さんの件があって、今は部室では難しいけれど、教えたいこともあるとか」

麗は、講義を受けている高橋麻央からのお願いでもあるし、助手として作業をしたこと、食事や寝る部屋まで準備してくれた誠意には応えようと思った。
「それほど大した学識ではないので、ありがたいことです」
と、無難な反応をする。
そして、東京に住む人たちの、地域差別の無さにも、感心する。

「京都とは全然違う」
「とにかく京都の人は、京都市内に住んでいない限り、格下に見る」
「どれほど偉い人、才能がある人でも、格下に見る」
「同じ京都市内でも、住んでいる地域で格上、格下をしっかりとつける」
「新参者を虚仮にする、親子三代住まないと、人間扱いしない」
「表面では挨拶する場合もあるけれど、裏に回れば先祖は非民やろ?とか」

「それが、東京では・・・実力だけで評価するのか」
「京都は、実力なんて関係ない」
「京都でいう実力は、家柄と住む場所だ、それだけだ」
「地方に住んでいるというだけで、どれほど恵理さんと結さんに、馬鹿にされたか、苛められたか、まるで人間扱いではなかった」


ただ、麗はそうでもない人も思い出す。
「九条の大旦那、茜さん、五月さんは、そうではなかった、普通に接してくれた」
「理由はわからないけれど」
「母さんの実家の香料店も、愛想は良かった、それも理由はわからない」
「ただの血のつながりだけなのかもしれないけれど」

いつもの能面のような顔をして黙っている麗に佐保。
「お風呂に先に入って欲しいの」
「洗濯もあるし、着替えも持って来てないでしょ?」

麗は、現実に引き戻された。
「あ・・・それは、その通りです」
「本当に予定外のことなので、申し訳ありません」

その麗を麻央が笑う。
「こっちが強引に連れ込んだから、仕方ないもの」
「責任は取ります」

佐保
「麗君、大き目のパジャマがあるから、それを使って」
「下着は、ないけれど」

麗は、パジャマがあるだけでも、ありがたいと思うし、下着がないのも仕方ないと思う。
「わかりました」と素直に応じることにした。

佐保に案内されて入ったお風呂は、ジャグジー付きの5,6人は入れるような大きな湯舟。
備え付けの石鹸やシャンプーの類も、かなり高そうなもの。

麗が「まるで温泉みたいだ」と、ゆっくり身体を沈めると、脱衣室から佐保の声。

「麗君、湯加減はどう?熱いとかぬるいとか」

麗は素直に答えた。
「はい、ありがとうございます、湯加減はこれくらいで」
すると佐保の声が弾んだ。
「よかった!」

麗が、黙っていると、また佐保の声がした。
「お背中流しましょうか?」
「流したいなあ」

麗は慌て、抵抗をする。
「え・・・恥ずかしいから、それは・・・」
しかし、麗の抵抗は意味をなさなかった。

スーッと浴室の扉が開き、佐保がタオルを巻いて入って来る。

麗は、顔を下に向ける。
「あの・・・」

佐保はタオルを全て外して、湯舟に入り、麗に密着。
「さっきの麻央の抱きつきから、我慢できないの」

佐保の腕は、そのまま麗の背中に回っている。
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