第456話九条ビル見学(1)

文字数 1,373文字

九条ビル7階の大広間改装計画の素案検討後は、高橋所長の案内で、各階の見学。
まず、地下は駐車場、8割程度の利用状態。

高橋所長
「催し物があれば、すぐに満車になってしまいます」
「ただ、ほとんどが地下鉄、あるいはタクシー利用で来られます」
「また、至近に有料駐車場があり、割引券を渡しています」
麗は、これは仕方ないと思うので、コメントはしない。

1階は、京都の物産店、主に九条財団の出版物を取り扱う書店もある。
高橋所長
「物産店は、かなりの利用客があります、中身も厳選してあります」
「単なる土産物屋とは一線を画して」

麗は、店舗内を歩く。
確かに値段も少し高め、高級感のある品揃え。
九条家に出入りしている業者の物もあるし、品質も確かなのだと思う。

麗は高橋所長の説明に納得。
「確かに、京都の土産物屋とは違いますね、安心して買えると思います」
高橋所長は、柔和な顔を引き締める。
「まあ、京都の土産物屋も、いろいろ言われておりますが」
麗は高橋所長の次の言葉を予測する。
「中身・・・値段に合わない中身ですか?」

高橋所長は続けた。
「今後は、何とかしないと、と心配になります」
麗も、厳しめな顔になる。
「中身をまともなものにする・・・それは当然だけど」
「あれほどの観光客が押し寄せれば、中身のチェックが追い付かない」
「困るのは、それを理由にして、粗悪品を高級品として売りつけ、暴利を得てしまう店」
「観光客も、馬鹿では、あり続けません」
「土産物で買って帰るけれど、家で中身を取り出して、その酷さに唖然となる」
「そうかと言って、値段に合う良い品など、観光客の数ほどには、集まらず」

高橋所長は、大きく頷く。
「さすが麗様、ようわかっておられます」
「中身をよくしろは、簡単」
「しかし、その実現は、厳しい」
「そうかと言って、今のままでは、将来が心配になります」
「安易に暴利をむさぼる癖がつくと、京都の評判は落ちるのです」

物産展の隣の書店に入る。
高橋所長
「九条財団の出版物、それから京に関係する書籍やDVDなどを販売しております」
葵が、麗に声をかける。
「いずれは麗様の本も?」
麗は苦笑。
「まだまだ、そんな段階では・・・」
「仕事が途切れなくて、自分だけの時間が・・・一日3時間あるかないか」
高橋所長は心配そうな顔。
「ほんまに、大活躍で、人気も高くて」
「ただ、お忙し過ぎます」
「出向いていただいて恐縮ですが、お身体が心配になることもあります」
麗は、また苦笑。
「食べ物さえ食べていれば、滅多に倒れない頑固な身体かもしれません」

2階は、既に昼食場所にしたレストランなので省略、3階にそのままエレベーターで昇る。
高橋所長
「九条財団の観光部になります」
「京都と畿内観光を中心に国内観光」
「国外旅行も取り扱っています」
麗は高橋所長に声をかける。
「夏の石仏調査が終わったら、ご苦労様として、伊豆で高足カニを食べる話が」
高橋所長は笑顔。
「はい、ご心配なく、すでに抑えてあります」
「私も、カニを食べたいので、一緒します」

4階に移った。
高橋所長
「テナントですが、内科のクリニックに入ってもらっています」
「主に近所のサラリーマン、店舗の方が来られます」
「京都出身の医師、当然九条家本家、花園美幸様とも、深いご縁があります」

麗は、少し安心。
勤務先の同じビルにクリニックがあれば、奈々子の不安も相当軽減されると考えている。
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