第371話麗は満腹で居眠り その後は珍しく葵をデートに誘う。

文字数 997文字

葵は、午後からの大教室の授業で、狙い通り麗の隣の席をゲットしたものの、その麗は講義開始時点から眠たそうな顔。
葵は、「あら、珍しい、面白い」と思ったので、麗に聞いてみた。
「麗様、何があったんです?」

麗は、その口を押えて、ボソボソ。
「匂ったらごめんなさい」
「二人のおばさん先生に拉致されて」
葵は、プッとふきそうになる。
「麗様、おばさんは言い過ぎです」
「高橋先生と中西先生でしょ?」
「なかなか美人やないですか」
麗は、口を押えたまま、首を横に振る。
「いや、あの食欲は・・・常識を超えている」

葵はクンクンと麗の服の匂いを嗅ぐ。
「麗様、珍しい香りが」
「もしや、カレーですか?」
麗の顔が、少し動揺。
「ごめんなさい、断れなくて」
「それも、大盛カツカレーを」
葵は、今度はプッと笑う。
「あらーー・・・面白い」
「うちも、実は・・・好きです」
「麗様が食べるのを見たかった」
「完食なされました?」
麗は、頷く。
「無理やりで、あのおばさん二人は先に食べ終わって、アイスまで」
「なかなか消化できなくて」

葵は、そんなことをボソボソという麗が、実に面白い。
時折感じる氷のような冷たさは、全く感じない。
「わかりました、うちが責任持って支えます」
「寝ていて構いません」

麗は、実に恥ずかしそうな顔になるけれど、眠気には勝てないようだ。
葵が、少し身体を寄せると、間もなく居眠りの世界に入ってしまった。

その麗が目を覚ましたのは、およそ15分後。
「あ、ごめんなさい」と恥ずかしそうな顔。

葵は、そんな麗の顔が、面白い。
「退屈な講義です、教科書棒読みで」
「もっと寝ていても構いません」

麗は首を横に振る。
目を覚ました後は、いつも通り真面目に講義を聞く。
葵も、麗がそうなってしまえば仕方がない。
麗への身体の寄せは変えず、講義を聞き続けた。

さて、そんな講義が終わり。麗も葵も今日の講義は全て終了。

麗が葵の顔を見た。
「何か予定はあります?」
葵は、珍しく麗に聞かれて、実にうれしい。
「あら・・・何か?」


「和風喫茶と言うのかな」
「緑茶と和菓子の店があるようで」
「いろんな産地の緑茶と和菓子の店です」

葵は、断る理由がない。
「はい、わかりました、行きましょう」
「面白そうです」

一緒に歩きながら、麗。
「昔、横浜の元町の近くにも、そんな店があったようで」
「珈琲と紅茶を主体にした純喫茶もいいけれど」

葵は、麗の表情に、「何か、新しいことを考えている」と、感じている。
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