第113話奈々子と香苗

文字数 1,129文字

香苗は、まず明後日の九条様と麗の面会の話。
「なあ、明後日やろ?大丈夫?」
奈々子は、涙声。
「ああ・・・わからん、蘭と一緒に聞こうと思ったけど」
「麗から、失礼に当たると断られた」
香苗は、言葉に詰まる。
「それは・・・麗ちゃんが正解や」
「余計なことは、せんほうがええな」
奈々子
「それは・・・そうやけど・・・辛いで」
「あの子が、どんどん、遠くなる」
香苗
「そんなことやと思った、予想通りや」
「で、蘭ちゃんは泣いとる?」
奈々子
「一歩も部屋から出て来んわ」
「聞こえるのは泣き声だけ」
香苗
「今、桃香が慰めとる」
「桃香も必死や」
奈々子
「助かるわあ・・・お礼せな」
香苗は声を落とした。
「大変やな、恵理さんも・・・旦那さんも・・・自業自得やけど」
奈々子
「うん・・・あかん」
「どうにもならん」
香苗
「そこで待つ?」
奈々子は即答。
「待たん、売り払う」
香苗
「そやな、ばれたら、住めんな」
奈々子
「もともと、うちの金で名義や、あの人の金は一銭も入っとらん」
「どうしようと勝手や、浮気者の犯罪者に義理などあらへん」
香苗
「で、どこに住む?」
奈々子
「京都しか・・・他は知らんもの」
「蘭も転校させないと」
香苗
「また、晃兄さんの助け?今、大変やろ?」
奈々子
「そやなあ、隆君が危ないのに余計な神経を・・・」
香苗は、声を強めた。
「ほな、東京に出たら?」
「うちもおるし、桃香もおる」
「鎌倉には瞳も、美里もおるし」
奈々子
「東京?わけがわからんし」
「住むにしても、高いやろ?」
「まあ、瞳にも会いたいなあ、それは・・・思うけど」
香苗
「麗ちゃんが京都に引き取られたら、麗ちゃんのアパートに取り合えず住めば?」
「あくまでも、九条様と麗ちゃん次第やけど」
「さすがの麗ちゃんも逆らえんやろし」
奈々子は、うなった。
「麗は・・・頑固者やで」

香苗は声を低くした。
「しゃあない、麗ちゃんは、その運命やもの」
「それに事情を言えば、麗ちゃんも納得する」
「それに、蘭ちゃんが転校するにしても、京都よりは、こっちのほうが、東京のほうが人柄は素直や」
「麗ちゃんの大学の先生も、安心感たっぷりやから、相談に乗ってくれるで」

奈々子は、ハッと思い出した。
「ああ、あの日向先生?それから高橋先生?兄さんから聞いたわ」
「うちも・・・実は知っとるよ、娘の時」

香苗は、慎重な言い方。
「それがな、日向先生と高橋先生は、既に麗君の出自の情報を知っとる」
「晃さんが、よろしゅうにとか、しゃべったみたいや、悪気なくな」
「でな、麗ちゃんだけや、隠そうとしているのは」

奈々子は、麗の気持がわかる。
「麗は、そういう出自とか京都は嫌う、それもこれも、あの恵理さんと、あの人がそうした」
「京都に行くたびに、あれほど・・・苛められれば・・・」

奈々子は、結局また泣きだしている。
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