第407話竹田議員と浜村秘書に厳しい対応

文字数 1,323文字

午前9時、麗を東京に送り出した京都九条家に、顔面蒼白の竹田議員と浜村秘書が姿を見せた。
しかし、大旦那は、なかなか逢おうとはしない。
三条執事長も厳しい顔。
「大旦那もお忙しいのです」
「どうして事前に連絡をいただけないのですか?」
「それが、人の模範となるべき国会議員と秘書さんなのですか?」

竹田議員の膝は、三条執事長の言葉のたびに、震える。
そして、浜村秘書もいつもとは違う、薄ら笑いも消えている。
それでも、三条執事長が、大旦那の様子を伺いに、姿を消すとお互いの文句ばかり。

竹田議員
「お前のせいや、こんなになったんは」
「それに、お前はクビにしたはずや、何でついて来る?」
浜村秘書
「何を寝ぼけたこと言うとります?」
「万が一、大旦那のお気持ちが変わるかもしれません」
「そしたら、はっきり言います」
「竹田議員は止めて、この浜村を議員にと」
「竹田さんの、わけわからん演説より、この浜村のほうが、余程票を集めますと」
竹田議員
「お前は何もわかっとらん」
「こんなになったのは、昨日のことだけやない、日頃のお前の素行や」
「京中に嫌われるようなことを、しくさって」
浜村秘書
「竹田さんの、そういう所が、実にドンくさいんや」
「浜村が嫌われる?ほんまに、ありえませんて」
「この浜村が顔を見せるだけで、どんな場所でも大騒ぎ、拍手喝采ですわ」
「少なくとも、竹田さんより、扱いが華やかです」

それでも、30分して、三条執事長が戻って来た。
「お逢いになる気はないようです」
「事前連絡もなく、失礼やとも、迷惑とも」
「それから電話もひっきりなしで、お忙しい、ですからお引き取りを」

途端に浜村秘書が気色ばんだ。
「そこを何とかするのが執事でしょう!」
「仮にも、国会議員本人と秘書や」
「何で、融通の一つ、つけられんのですか」
竹田議員が、浜村秘書の袖を抑えるけれど、それも振り払う。

三条執事長は呆れ顔。
「誰かが言うとりました」
「金を出した時だけ、低姿勢で」
「少しすると、メチャ高飛車に変わる」

浜村秘書の表情が、再び青くなる。

三条執事長は続けた。
「忙しい病院の事務室に入り込んでは、看護師さんを口説こうとする」
「菓子屋に入れば、菓子を鞄に詰め込んで、金も払わん」
「しかも、香料プンプンのスーツで、他の客からも苦情」
「その上、禁煙と書いてあるのに、煙草を何本も吸い、ホコも落とし放題」
「それが京都から国政に出る議員さんの秘書なんです?」

三条執事長の厳しい言葉は、竹田議員にも。
「秘書の指導ができない国会議員」
「どうして国政を指導できるのです?」

そんなやり取りが続いた午前10時、九条屋敷に新たな来客。
三条執事長は、竹田議員と浜村秘書を、強い言い方。
「とにかく迷惑です、お引き取りください」
「大旦那は、お逢いにならないそうです」

竹田議員と浜村秘書が、うなだれて待合室を出ると、その来客とすれ違う。
竹田議員
「あのお方は・・・銀行の・・・」
浜村秘書
「いや、また・・・あのお方は不動産、それと財団、学園まで」

その日は、九条屋敷を辞した竹田議員と浜村秘書には、三条執事長から一切の連絡がなかった。
そして、翌日届いた封書には、「次の候補者を選定するので、竹田議員は次期選挙には後援をしないと決定」の文言が書かれていた
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み