第164話 師走の夜

文字数 863文字

「とにかく愛し合おうか」
彼は優しくそう語りかけてきた、私が固まったまま手に持っている物を取り机の上に置いた。
「何にも考えなくていいから、俺のこと愛しててて」
彼は矛盾している命題を私につきつけた。この場合「俺のことだけ愛してて、他は何にも考えなくていいから」と言うべきだったなとどうでもいいことが頭に思い浮かんだ。


充電が切れたヘッパー君のように相変わらずフリーズしたままの私を後ろから優しく抱きした。

この状況を目の前に凄く混乱していた。応仁の乱の頃の京都ぐらい誰が何をしているのか把握しきれていない。

彼は慣れた手つきで髪を右肩に勝手に束ね「いい匂い」と左の首筋にキスをした。

ヘッパー君はようやく充電され再起動し始めた。
「何、どうしたの?」
引きつり笑いで応えると彼は私のパジャマの一番上のボタンを外し鎖骨や肩を触ってきた。

鈍感力が高く新しい環境に適応するのが苦手な私でもこの状況を少しずつ飲み込んできていた。

これ、そういうことなんだよね……

彼がもう一つボタンをとって反対側の鎖骨にキスをした時「どうしたの?」と無理に笑って見せると、「首筋から肩のラインが凄くいいね」と囁いてきた。
けれど何と返していいのかわからない。

だからとびっきりの明るい声で「そうなんだ」答えた。彼の動きが一瞬とまり、変な間ができてしまった。むしろ私がわざと言葉を外したのを見透かされたのかもしれない。


けれど彼はめげずに耳元で「さっきの続きしようか」と囁いてきた。

本当に何のことかわからなかったので「さっきのって?」と聞き返すと「熱烈な歓迎のキスだよ」と囁かれた。

私が振り向いて何か言いかけたのを遮るようにキスをした。これ以上余計な事を言うなということらしい。

キスしている間にパジャマの上着のボタンを全部とられてあっという間に脱がされた。彼の手が私のシャツの隙間から入ってきて背中を撫で回している。

ようやくここで今の状況を全て受け止めることができた。

「この人完全にする気だ。どうしよう」
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