第90話 人間って難しいな
文字数 1,270文字
健と智がオムライスと唐揚げ定食を計4人前平らげ満足そうにしている、若いっていいなぁ。
「美子ちゃんと智は美子ちゃんのご実家に泊まるんでしょ?」
「うん、美子の父ちゃんが今夜は一緒に酒飲もうって言ってた」
ここですかさず美子ちゃんが気を回す。
「お姉さんも一緒に泊まりません?」
「大丈夫、私もすっごい気遣っちゃうしそれに智だけでも大変だよ」
「そうですか、じゃあお姉さん明日なんだけど父が午後仕事休みだから、全てが終わったら高崎まで車で送ってくれるっていうんだけどいいかな?」
「えっいいの?本当に有難いよ、ドラマで見るような白い箱抱えておまけに喪服で新幹線乗るのか、これ目立つなって思ってたから。美子ちゃんのお父さん有難う」
「確かにそれ目立つな」と健は吹き出した。
「という訳で健今日泊めてよ」
そう言うと何故だか健は困った顔をした。
「今日彼女部屋に来るの?」「いや、三日前から付き合い始めたばっかだしそういう訳じゃないんだけどさ」
智がすかさず「兄ちゃんが」と何かを言いかけたので「だから、丸山さんとは付き合ってるけど、今呼んじゃいけないって。そこまで迷惑かけちゃいけないんだって」
何故だか健も智も美子ちゃんまでもが何かを言いたげな変な顔をした。
実は三時ぐらいに丸山さんから電話がかかってきていた。けれど色々な手続きで忙しいからと出なかった。少しぐらい喋る時間はあるのに、彼の声を聞いたら泣いて迷惑をかけてしまいそうだったからだ。
突然私の背後から丸山さんの声が聞こえた。
「付き合ってるんだから、迷惑かけてくれよ」
振り向くと何故だかそこに彼がいた。
「何で!」と言うと智が「姉ちゃんごめん、エヘヘ」と誤魔化し笑いをした。
美子ちゃんは「お兄さんはじめまして、私達、私の実家に泊まるからこれで」と帰り支度を始めた。
健が「丸山さんがいるのに俺の部屋泊まるのまずいでしょ」と笑顔で呟くと、丸山さんも「流石にそれはやめてほしい」と愛想笑いをした。
「俺も彼女のとこ行こうっと」と呟いた健は席を立ち、わざわざ丸山さんに「亜紀、俺らじゃ泣けないからよろしくお願いします。人前で泣いちゃいけないって思い込んでるから」と余計な気遣いを残していった。
「健は本当に余計なことばっかり」と表情筋が引きつった私を見て彼は笑った。
夜の国道沿いの歩道を二人で歩いていた。帰宅ラッシュと重なり道路は渋滞している。
「ご飯食べました?」
「今日原宿の激甘スイーツの食べ歩きさせられたから、あと十二時間は何も食べたくない」
「甘い物嫌いなのに全部完食したんですか?」
「したよ、店の人がニコニコで俺の為に作ってくれてるもん残せる訳ないだろ?」
彼が今にも吐きそうなげっそりした表情を見せたので「テレビの神経質なイメージと違って凄くいい人」と笑った。
進行方向と逆向きに走る車のヘッドライトが眩しい。彼と何を話していいのかわからなかったので、暫く無言で歩いた。私達はどこへ向かって歩いているのだろうか。
「美子ちゃんと智は美子ちゃんのご実家に泊まるんでしょ?」
「うん、美子の父ちゃんが今夜は一緒に酒飲もうって言ってた」
ここですかさず美子ちゃんが気を回す。
「お姉さんも一緒に泊まりません?」
「大丈夫、私もすっごい気遣っちゃうしそれに智だけでも大変だよ」
「そうですか、じゃあお姉さん明日なんだけど父が午後仕事休みだから、全てが終わったら高崎まで車で送ってくれるっていうんだけどいいかな?」
「えっいいの?本当に有難いよ、ドラマで見るような白い箱抱えておまけに喪服で新幹線乗るのか、これ目立つなって思ってたから。美子ちゃんのお父さん有難う」
「確かにそれ目立つな」と健は吹き出した。
「という訳で健今日泊めてよ」
そう言うと何故だか健は困った顔をした。
「今日彼女部屋に来るの?」「いや、三日前から付き合い始めたばっかだしそういう訳じゃないんだけどさ」
智がすかさず「兄ちゃんが」と何かを言いかけたので「だから、丸山さんとは付き合ってるけど、今呼んじゃいけないって。そこまで迷惑かけちゃいけないんだって」
何故だか健も智も美子ちゃんまでもが何かを言いたげな変な顔をした。
実は三時ぐらいに丸山さんから電話がかかってきていた。けれど色々な手続きで忙しいからと出なかった。少しぐらい喋る時間はあるのに、彼の声を聞いたら泣いて迷惑をかけてしまいそうだったからだ。
突然私の背後から丸山さんの声が聞こえた。
「付き合ってるんだから、迷惑かけてくれよ」
振り向くと何故だかそこに彼がいた。
「何で!」と言うと智が「姉ちゃんごめん、エヘヘ」と誤魔化し笑いをした。
美子ちゃんは「お兄さんはじめまして、私達、私の実家に泊まるからこれで」と帰り支度を始めた。
健が「丸山さんがいるのに俺の部屋泊まるのまずいでしょ」と笑顔で呟くと、丸山さんも「流石にそれはやめてほしい」と愛想笑いをした。
「俺も彼女のとこ行こうっと」と呟いた健は席を立ち、わざわざ丸山さんに「亜紀、俺らじゃ泣けないからよろしくお願いします。人前で泣いちゃいけないって思い込んでるから」と余計な気遣いを残していった。
「健は本当に余計なことばっかり」と表情筋が引きつった私を見て彼は笑った。
夜の国道沿いの歩道を二人で歩いていた。帰宅ラッシュと重なり道路は渋滞している。
「ご飯食べました?」
「今日原宿の激甘スイーツの食べ歩きさせられたから、あと十二時間は何も食べたくない」
「甘い物嫌いなのに全部完食したんですか?」
「したよ、店の人がニコニコで俺の為に作ってくれてるもん残せる訳ないだろ?」
彼が今にも吐きそうなげっそりした表情を見せたので「テレビの神経質なイメージと違って凄くいい人」と笑った。
進行方向と逆向きに走る車のヘッドライトが眩しい。彼と何を話していいのかわからなかったので、暫く無言で歩いた。私達はどこへ向かって歩いているのだろうか。